「江戸のアヴァンギャルド」を見よ!~奇想の天才・伊藤若冲はいかにして再発見されたのか

辻惟雄『若冲』
辻 惟雄

装いを改めた普及版『若冲』

さて、今回の文庫版『若冲』は、「動植綵絵」全30幅をはじめとする原色版のほとんどすべてを、カラー図版で収載している。むろんこれが眼目だが、著者として嬉しいのは、秋山光夫、土居次義氏ら、先学の業績を継いで、未熟ながら全力で書いた本文と図版解説文が、久しぶりに陽の目を見たことである。

四十余年経ち、若冲研究もさまざまの成果を生んだ。その一つは、「動植綵絵」を完成させ名声を高めた若冲が、京都東町奉行所を動かして錦小路青物市場を廃止に追い込もうとした一味の策謀に憤然と立ち向かったという意外な事実の発見である。

こうした、書き改めの必要な箇所は少なからずあるが、つつき出すときりがない。それゆえ最低限の補注にとどめ、基本は原文のままとした。

その後新しく発見された傑作・話題作も少なくないが、補うことはあきらめ、代表として巻頭に、若冲最晩年の童心を満喫できる「象と鯨図屛風」(MIHO MUSEUM蔵)を載せるにとどめた。

編集し直された本書の文献目録が、新出作品の検索に役立てば幸いである。若冲が用いた印も、その後十種ほど新しく見つかっているので、それらを印譜に補った。

装いを改めた普及版『若冲』が、依然役立つことを望みつつ・・・。

(つじ・のぶお 美術史学者)
読書人の雑誌「本」2015年11月号より

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若冲
著者=辻惟雄
税別価格:1,500円

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