とはいえ、アカデミズムの道から離れて開業医になった同級生たちは平日からゴルフに行ったり、フェラーリに乗ったりする優雅な生活を満喫していて、うらやましく思うこともあるという。
「妻にもしきりに『早く開業してほしい』と言われます。でも、今は研究をあきらめるつもりはありません。
日本の医療界は楽をすればするほどカネが儲かるという変な構造になっています。最先端の医療で難病治療をするよりも、風邪の患者に解熱剤を処方しているほうが儲かるんですから。
さすがにもう少し待遇がよくてもいいかなと思うこともありますが、逆に言えば真面目な人材が研究に邁進し、カネ目当てで研究をする人がいない分だけ、日本の医学の質が担保されているともいえますね」
カネには代えられないやりがいや名誉、プライドが医局の出世コースには存在するのだ。
だが、あえて医師として「苦難の道」を選んだエリートたちが、患者が望む治療を施してくれるとは限らないことは、先に述べた通り。
次回は、東大病院をモデルに、大学病院の権力ピラミッドを詳細に見て行こう。
「週刊現代」2015年10月31日号より