白い巨塔・大学病院「出世の階段」に「医者の実力」は関係ない?

楽をするほどカネが儲かる医療界の真実
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開業医のほうが儲かるけれど

では、大学病院に残らなかった医者たちはどうなるのか。いちばん多いのは大学病院と関係の深い関連病院に派遣されるパターンだ。例えば、東大病院の場合、帝京大学病院や虎の門病院、三井記念病院など関連病院がいくつもある。都内のみならず、地方の辺鄙なところにも病院はあり、博士号取得後の数年間、「お礼奉公」としてそのような地方病院に派遣されるケースも多い。

興味深いのは、このように一般の関連病院に派遣されたほうが、医師としての稼ぎはずっと上がるということだ。大学病院に居続ける限り、病院から受け取る給与は他学部の教員と一律になるため、40歳の講師でも700万〜800万円程度だ。

ただし、外勤のアルバイトがあるので実質の実入りは大きな幅がある。なかにはアルバイトに精を出して、年間2000万円ものバイト代を稼ぐ「猛者」もいるが、あまりやりすぎると医局内での出世の道が閉ざされる。

一方で、一般の病院の勤務医になれば、大学病院の倍以上の給与が保証される。

一般病院では臨床が重視されるので、「出世している医者=患者にとっていい医者」となる可能性が大学病院よりも高い。ただし、ある程度出世した医者は病院経営の責任者でもある点には注意しておきたい。場合によっては、収益向上のため無駄な検査や手術が行われることもあるからだ。ビジネスの才覚があって出世した医者ほど、そのような検査を好む可能性が高い。

医局を出た医者の歩む道のもう一つのパターンは開業医だ。「お礼奉公」で地方病院に勤務しながら、開業資金を貯め、さらにローンを組んで30代後半から40代前半に開業する場合が多い。

自営業なのでそれなりのリスクを取ることになるが、開業医の年収は平均で3000万円弱。経済的に見れば、もっとも美味しいキャリアだ。開業後は、大学の医局とのつながりは弱まり、関連団体である日本医師会に所属することになる。

このように経済的に見れば、明らかに一般病院に勤務したり、開業したほうが得だ。しかし大学病院に残って医局の階段を上っていく道こそが、エリート医師の王道とされている。

研究の最先端の現場で豊富な症例に触れることができるし、学会や留学などで海外に出る機会にも恵まれる。なにより自分の研究が、医学の進歩に貢献していると実感できるのだから、やりがいは十分だ。米国での研究生活を終えて関東の国立大学病院に戻ってきたばかりの心臓外科医が語る。

「正直、割に合わない仕事だと思うこともありますよ。心臓外科は出世レースが激しい科なので、どうしても勤務時間が長くなりがちで、朝7時から夜の11時まで働くため『セブン-イレブン』といわれています。

それでも医局に残ることにこだわるのは、自分のやりたい研究があるからです。研究費を取ってきて、好きな研究をするためには出世しなければならない。手術に関しても、一番手にならないと大事な難しい手術はさせてもらえませんしね」