長渕剛の『乾杯』を語ろう〜バブルの裏側をとらえた愚直な応援歌、大ヒットの理由

神山典士×田家秀樹×柳井満
週刊現代 プロフィール

柳井 ドラマの『とんぼ』も長渕くんの一つ大きな転機でした。『とんぼ』までは、つねに彼の傍に少年を置いていました。僕は長渕くんの魅力は笑顔だと思っているんです。子供が憧れるような、ちょっと悪いことも教えてくれるチャーミングな「兄貴の笑顔」。

でも、『とんぼ』からは、彼はヤクザ映画に傾倒していきました。もともと東映のヤクザ映画の大ファンでしたからね。

田家 『とんぼ』は笑顔というよりも、今に繋がるストイックな長渕さんのイメージですね。

柳井 最近テレビで見ると、彼があの吸い込まれそうな笑顔を見せることが減っているのではと、もったいなく思います。

田家 今もライブでは笑顔を見せていますよ。とにかく、ライブの歌唱は今のほうが圧倒的にいい。

8月に富士山麓で行われたオールナイト10万人ライブでも、心拍数を計りながらリハーサルを行うなど、ライブへの覚悟がすごい。

神山 昔から徹底してたけど、今のライブも熱いファンに支えられている。『乾杯』も客席の大合唱のなか歌っています。長渕さんには、自分が消えても曲は生き続ける、という音楽への思いがある。

田家 まさに『乾杯』は100年、200年たっても、長渕剛という名前が忘れられたとしても、残っている曲だと思います。

こうやま・のりお/'60年埼玉県生まれ。ノンフィクション作家。経済から芸能まで幅広く執筆。佐村河内守事件で'14年大宅壮一ノンフィクション賞受賞
たけ・ひでき/'46年千葉県生まれ。音楽評論家。吉田拓郎、浜田省吾、甲斐よしひろなど数多くのミュージシャンを取材。長渕剛のインタビューも多数
やない・みつる/'35年生まれ。元TBSプロデューサー。『金八先生』での武田鉄矢、『家族ゲーム』での長渕剛など、俳優としての才能を多く見出した

「週刊現代」2015年10月31日号より