「日本一の過疎」に韓国人が殺到!〜「田舎の小さなパン屋」が熱狂的に支持されるワケ

萱原 正嗣 プロフィール

ハンギョレ新聞の取材記事は韓国でさらに読者を増やすきっかけとなり、昨年末には、メディアや書店が選ぶ「今年の1冊」に軒並み選ばれた。以下がその主なもので、KBS、MBC、SBS、CBSなどの放送局でも多数紹介されている。

「2015年出版人が選んだ隠れた名著」1位
「朝鮮日報、東亜日報、京郷新聞、ハンギョレ新聞の選定の今年の本(2014)」
「オーマイニュースの市民書評団が選んだ今年の本(2014)」
「KYOBO Premium Book、隠された良い本の選定(2014)」
「KYOBO文庫選定の今年の本(2014)」
「YES24今年の本候補図書(2014)」
「幸せな朝の読書新聞推薦図書(2014)」

ネット書店とリアル書店の両方を展開する「KYOBO(教保)文庫」は、日本で言うとジュンク堂書店のような大手書店だ。そのソウル市内の店舗では、本書が政治・社会のカテゴリーで1年以上断続的にベスト10にランクインしているという。

同店ブックマスター課長のカン・ウンジンさんは、本書の売れ行きについて次のように語る。

「この分野のランキングは入れ替わりが激しく、一度ランキングから外れたらもう一度ランクインすることはまずありません。この本は、ときおりランキングから外れることもありましたが、すぐまた戻ってきましたし、1年以上ランキングの常連になっているのは驚くべきことです」

10月2日(金)に「KYOBO文庫」江南店を訪れた際、本書は政治・社会のカテゴリーで7位だった。6位も日本の翻訳書で、日本では本書より一足早くベストセラーになった『里山資本主義』。なお、「タルマーリー」は「里山資本主義」のその後を紹介するNHKの番組に登場したこともある

本書が多くの韓国の読者に届いていることは、ネット書店の動きからも見て取れる。ネット書店最大手の「Yes24」では、2015年10月現在、本書に対して50件ものコメントがついている。同時期の日本のアマゾンのコメント数は35件だ。

寄せられたコメントを、ウェブの翻訳サービスを使って読んでみると、「読者の集い」での真剣な眼差しを想起させる熱い言葉が並ぶ。韓国の読者は、この本を我が事として受け止め、2人の取り組みをどうすれば自分の仕事や暮らしに、あるいは韓国の社会で活かせるかを真剣に考えているようだ。

(余談だが、韓国にはアマゾンが進出していない。一方で、リアル書店が苦戦を強いられ、ネット書店が売上を伸ばしている構図は日韓共通のようだ)

日本の田舎のパン屋が書いた1冊の本が、なぜ、かくも韓国の人たちの心をとらえたのか――。