「日本一の過疎」に韓国人が殺到!〜「田舎の小さなパン屋」が熱狂的に支持されるワケ

萱原 正嗣 プロフィール
ソウル市内のカフェ兼アートスペースで開かれた記者懇談会の様子。記者たちは、ふたりの言葉を漏らすまいと、終始メモをとり続けていた

こうしたメディアの反応は、韓国での出版当初から続々と日本に届けられてきた。

朝鮮日報・東亜日報・京郷新聞・ハンギョレ新聞の韓国主要4紙で立て続けに書籍が紹介されたことが日本に伝えられたのもつかの間、直後の昨年7月にはハンギョレ新聞の記者がタルマーリーに取材に訪れた。

そのころタルマーリーは、岡山県北部の町、真庭市勝山の古民家でパン屋を営んでいた(昨年10月に勝山の店を一時的に閉め、半年強の準備期間を経て鳥取県智頭町に移転した)。

夏の暑いさなか、冷房のない古民家の一室に設けたカフェで、ハンギョレ新聞のイ・ジェソン記者と「The SOUP」社の社長キム・ジジュン氏、本書の翻訳を手掛け通訳として同行したチョン・ムンジュ(鄭文珠)氏の3人が、小さなテーブルを挟んでタルマーリーのふたりと向かい合って座る。

「利潤を目指さない経営とは?」
「地域通貨のようなパンとは?」

本で紹介していたタルマーリーの経営スタイルについて、次々と質問が寄せられる。

記者の話によれば、韓国では資本主義的競争が激化し、労働者は過酷な労働を強いられ、解雇される人も少なくないという。そういう人たちはやむにやまれず自営業者になるが、厳しい状況に追い込まれている(働く人の3割近くが自営業者だという。日本は労働者人口の1割強が自営業者だ)。

一方、今は解雇を免れている人もリストラの不安に怯えている。社会に不安が蔓延し、「資本主義のオルタナティブ」を模索する動きが強まっている。そのための「希望の書」として、本書が読まれたとのことだ。

なお、その日は偶然、韓国から本書を読んでやってきたという夫婦もタルマーリーに訪れていた。その後もたびたび、韓国からわざわざタルマーリー目掛けてやってくる人が後を絶たない。そのなかにも、「タルマーリーで働きたい」と願い出る人が何人かいたという。

本書は、日本でも「ポスト資本主義」の実践指南書として広く読まれた。

昨年末には、25万部を超えるベストセラーとなった『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)の著者、エコノミストの水野和夫氏との異色の対談が行われ、水野氏はタルマーリーの「利潤を目指さない経営」を、「ポスト資本主義時代にふさわしい経営スタイル」と高く評価したほどだ。

このときの異色対談の様子は、こちらの記事を参照されたい。
前編リンク http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41541
後編リンク http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41542

異例の反響、続々と……

話を韓国での反響に戻そう。