「日本一の過疎」に韓国人が殺到!〜「田舎の小さなパン屋」が熱狂的に支持されるワケ

萱原 正嗣 プロフィール

冒頭で紹介したイベントは、韓国のネット書店4社(YES24・Interpark・KYOBO・Aladin)と、韓国でこの本を出版した「The SOUP」社が共同で開催した「読者の集い」だ。

翌10月1日(木)夕方にも100名規模の「読者の集い」が開催され、会場は読者の熱気に包まれた。聞けば、2回合計で200名の枠を上回る読者からの申し込みがあり、抽選が行われたという。

この日もタルマーリーのふたりに次々と質問や感激の声が寄せられ、講演終了後はやはり長時間のサイン会となった。なかには、「タルマーリーで働きたい」と熱い想いをぶつける高校生の姿もあった。ふたりと言葉を交わして歓喜の表情を浮かべる人たちの姿は、「読者」というよりも「熱狂的なファン」のように見えた。

日本のメディアでは、韓国は反日感情一色に染まっているかのような報道が目につくが、この日の熱狂ぶりを見ると、それが必ずしも韓国の実像を表していないことは明らかだ。

現実の韓国では、村上春樹や東野圭吾、宮部みゆきといった日本人作家の小説が人気で、書店には日本文学コーナーが設けられているほどだ。韓国で1年間に出版される1万点を超える翻訳書の4割近くは日本語からの翻訳だとも言われている。

だが、本書は小説でもなければ著者も人気作家だったわけではない。パン屋の主が書いた等身大の社会書・経済書が、韓国の人たちの心を惹きつけているのは、驚くべきことと言えるだろう。

イベント会場では、ふたりのサインを求めて長い列ができた。読者は一人ひとり自分の想いをふたりに伝え、列はなかなか進まない

「ポスト資本主義」を目指す「希望の書」

タルマーリーとの対面を心待ちにしていたのは、読者だけではない。

2泊3日の韓国滞在中、韓国メディア6紙誌の取材や記者懇談会の予定が組まれ、いずれの記者からも、本を深く読み込んだうえでの質問が数多く寄せられた。なかには、単独取材だけでは飽き足らず、記者懇談会にも出席し、熱心に質問を投げかけた記者もいた。

一連の動きは、すぐにメディアで報じられた。釜山日報(9月30日)、慶北日報(10月1日)、ソウル経済(10月1日)、京郷新聞(10月1日)、国民日報(10月1日)で、ふたりの言葉や本の内容があらためて紹介され、「読者の集い」のイベントが盛況であったことは、その他さまざまなメディアで伝えられた。