羽生結弦 ケガを乗り越え、前代未聞の連覇を目指す
「主役は誰にも渡さない」

フィギュアスケート、エースの覚悟
週刊現代 プロフィール

ライバルがいるから燃える

宇野の台頭により、初めて追われる立場になった羽生。だが羽生に焦りはない。むしろ心の中にあるのは強い選手と戦える高揚感だ。少女漫画の主人公に「ライバル」が不可欠なように、羽生もまた強いライバルの出現を望んでいた。

前出の佐野氏が語る。

「羽生は宇野の出現を喜んでいます。宇野は自分を成長させてくれる存在、いずれは世界チャンピオンを争う相手になると考えている。羽生も20歳になり、これからは10代の後輩がどんどん出てくる。今までは追いかける側だったけれど、これからは追いかけられる立場になる。そこでどんな成長を見せるか、それが今シーズン、試されるわけです」

前出の折山氏は「羽生と宇野の関係は、過去の高橋と羽生の関係と似ている」と言う。

「実際羽生も高橋といういい目標があったから、ここまで伸びることができた。羽生と宇野の二人が鎬を削って戦えば戦うほど、ひいては日本全体のレベルアップにもつながっていくと思います」

宇野は間違いなく近い将来、羽生を脅かす存在になる—前出の佐野氏はそう太鼓判を押すが、一方で現時点では「羽生と宇野の間にはまだまだ差がある」という。

「羽生の強みは、トゥループとサルコウという2種類の4回転ジャンプを跳べることです。しかも今季は、疲れてくる演技後半にジャンプを入れてポイントを稼ぐプログラムにしている。技術的にも体力的にも宇野より一次元高いことをやっているのが羽生なんです」

前出の井原氏も「宇野はまだまだ羽生君には及ばない」と前置きしながらも、こう期待を寄せる。

「宇野はとにかく研究熱心なんです。普通の子は失敗したら何も考えずに次に行ってしまうのですが、宇野は『なぜ、失敗したのか』をとことん突き詰めてから練習するタイプ。趣味のゲームもそんな感じで、凝り性というか、なんでものめり込む性格なので、スケート向きだと思います。

本人も『若いんだから守りに入らず、とにかく攻める』と言うように、臆せず羽生君に向かっていってほしい」

羽生は、2年半後の平昌五輪を最後にプロに転向することを発表しているが、そう簡単に後輩に道を譲る気はない。史上初の五輪2連覇を達成するまで、主役の座は誰にも渡さない。

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「週刊現代」2015年10月31日号より