イギリスが乗った「危険な外交ゲーム」の幕開けに、習近平の高笑いが止まらない!

英米の仲を分断する中国の露骨な「アメとムチ」
笠原 敏彦 プロフィール

チャイナマネー争奪戦に勝つことが最優先

現下の国際情勢の下、英国が習氏訪問を諸手を挙げて歓迎したことは、対中宥和路線という批判を覚悟した上で、チャイナマネー争奪の国際競争に勝ち抜くという固い政治的意思を示したものと言えるだろう。

21日の英中首脳会談で合意した経済協力の内容をみると、海外で初となる人民元建て国債をロンドンで発行する▽中国国営の原子力企業・中国広核集団(CGN)が英南西部ヒンクリーポイントでの原発建設に33.5%を出資することなど原発案件3件▽英国の高速鉄道建設に中国企業が参入する、などが主なものだ。

こうした合意内容は、経済的側面だけを見れば確かに「ウィン・ウィン」の関係に見える。人民元建て国債発行は、ロンドンを人民元のオフショア取引の最大拠点としたい「金融立国」英国と、人民元の国際化を急ぎたい中国の思惑が一致する。

また、原発や鉄道など国内インフラの整備・再生を中国の投資で推進したい英国と、英国での実績をテコに欧米企業が支配する世界の大型インフラ市場への参入を目論む中国の思惑も一致する。中国の新帝国主義路線とも言われるプロジェクト「一帯一路(新シルクロード)」構想への英企業の積極的な参加も合意された。

英国は「開かれた経済」を信条とする国だ。インフラ部門も例外ではなく、中国企業もすでにヒースロー空港運営会社の株式の約10%、水道事業会社「テムズ・ウォーター」の株式の約9%などを保有している。

しかし、共産主義体制の中国が国際政治や安全保障面で何を目指しているのか不透明な中、国家の最重要インフラである原発部門で中国企業に門戸を開いたことには強い批判がある。原発の安全性や、核兵器開発、サイバーテロなど安全保障への脅威を無視したものだという見方が強いからだ。

英議会の情報・安全保障委員会が英国の「開かれた経済」の在り方全般について、「投資政策と安全保障政策に断絶がある」と警告していることが、その危うい実情を物語っていると言えるだろう。

漂流する国際秩序

それでも、英国の対中宥和路線は長期的なトレンドとなりそうである。なぜなら、対中政策を主導するオズボーン財務相は、次期首相の最有力候補だからである。