イギリスが乗った「危険な外交ゲーム」の幕開けに、習近平の高笑いが止まらない!

英米の仲を分断する中国の露骨な「アメとムチ」
笠原 敏彦 プロフィール

イギリスは中国にとって「利用価値」が高い

現時点では、英中のどちらが外交巧者としてより上手なのかは分からない。

しかし、中国が英国の「使い勝手」の良さを思い知ったのは、英国が今年3月に米国の反対を押し切って中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明したときだろう。これを受け、それまで米国の顔色を伺っていた仏独、オーストラリア、韓国など「米国の友人」が雪崩を打ったようにAIIBへの参加を表明したからである。

AIIBが世銀の優位性を揺るがすことを懸念する米国は、同盟国の国際的な包囲網でAIIBに圧力をかけ、厳格な融資基準など適正な運用を迫る方針だった。それなのに、結果を見れば、米国と日本が取り残される形になり、米国の国際的な威信は大きく傷ついてしまった。

米当局者はFT紙に「英国が中国に宥和的な傾向にあることを憂慮している。英国のやり方は台頭するパワーに関与する最善の方法ではない」と英国への不信感を口にしている。

英国のAIIB参加表明は唐突だった。それもそのはずで、政権ナンバー2のオズボーン財務相の個人的なイニシアチブの側面が強かったのである。彼は、「同盟国の日本や米国を疎遠にする」と懸念する英外務省の反対に耳を貸さず、国家安全保障会議(NSC)の場でキャメロン首相の同意を取りつけたのだという。

キャメロン首相はオズボーン財務相に大きな”借り”がある。首相は2012年5月、財務相の反対を押し切り、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会談し、対中関係を悪化させた。この間、中国の欧州における貿易相手として、英国はドイツに大きく水をあけられたという経緯があったからである。

オズボーン氏は、オックスフォード大学卒業後に中国をバックパックで旅行したという親中派だ。彼は、英国の対中貿易を現在の6位から今後10年で2位に引き上げるという目標を掲げている。

今年9月下旬には、習氏訪英の露払いとして中国を訪問。イスラム系少数民族の弾圧が続く中国北西部・新疆ウィグル自治区も訪れたが、人権問題には口をつぐんだ。欧米の主要閣僚としては異例の新疆訪問は、中国が求めた「踏み絵」だったのかもしれない。