イギリスが乗った「危険な外交ゲーム」の幕開けに、習近平の高笑いが止まらない!

英米の仲を分断する中国の露骨な「アメとムチ」
笠原 敏彦 プロフィール

習主席はエリザベス女王とともに壮麗な馬車でパレードし、ウィリアム王子の妻キャサリン妃は中国の国旗にあせた真っ赤なドレスで晩餐会に出席し、習主席の隣に座った。

中国メディアはこうした様子を大々的に報道。英国が対中批判を封じ、「へつらう(kowtow)」かのような姿勢を見せたことは、中国国民に「尊敬される大国になった中国」をアピールするまたとない機会となった。

習氏は、中華民族の偉大な復興という「中国の夢」に一歩近づいたと感じたかもしれない。少なくも、今回の訪英は、かつて支配した側・英国と、支配された側・中国の外交における「心理的な枠組み」の転換を鮮明に印象づけるものだった。

アメリカとイギリスの対中政策の落差

ここで注目すべきは、この訪英が9月の習氏訪米と鮮やかなコントラストを見せたことである。

わずか1ヵ月の間に米英両国から国賓として招かれたこと自体が特筆されるべきことだが、オバマ大統領との会談では人権、サイバーセキュリティ、南シナ海での領有権問題などをめぐり米中間の深すぎる溝が浮き彫りになった。

英誌エコノミストによると、ワシントンでは「中国が変わる」ことへの期待が急速に萎んでいるという。キャメロン政権の習氏歓待は、米中首脳会談の結果に幻滅した米国が、南シナ海の中国の人工島周辺の「領海」12海里内へ艦船を進入させる構えを見せるタイミングで進んだのである。

ちなみに、米国が今守ろうとしている「航行の自由」は、大英帝国時代の英国が高々と掲げ、世界に広げた国際ルールである。

米国は相対的なパワーの低下から、同盟国のネットワークを強化することで、リベラルな国際秩序を維持しようとしている。

その矢先に露になった米英間の対中アプローチの歴然たる違い。英米関係は、ブッシュ大統領とブレア首相が始めたイラク戦争の「失敗」後、亀裂が目立ち始めている。そこへ「台頭する中国」が新たな分断要因として加わった。習氏訪英は、戦後の国際秩序を牽引してきた米英間の「特別な関係」に楔を打ち込んだと言えるだろう。

そして、今回の習氏訪英への経緯を振り返ると、国益を最優先に対中宥和路線へ舵を切った英国の姿が浮かび上がるのである。