中国日本人拘束「スパイ疑惑」の余波〜官僚たちが踏み入れた冷酷な「諜報戦」の行方

公安を知り尽くした男が明かす、スクープルポ第二弾!
竹内 明 プロフィール

外務省と警察庁の「亀裂」

だが、このテロ対策ユニットを巡っては、各省庁間の省益争いが激化している。外務省サイドは、自分たち以外に適任者はいない、対象国の言語も文化も解さない他省出身者に何ができるのかと主張する。対外情報活動は長年、外交官が担ってきたという自負もある。

一方で、警察庁は、ユニットを外務省傘下に置くことに強く反発した。彼らは彼らで、海外に逃亡した日本赤軍の追跡や逮捕などで、テロ対策のノウハウを積み上げてきたというプライドがあるのだ。たしかに、世界の捜査機関、防諜機関とのネットワークを持つのも、現状では警察庁である。

警察・外務の綱引きの末、新組織に派遣される者は、警察の牙城である内閣情報調査室との併任辞令を受けることとなった。組織としては外務省の下にありながら、職員は警察キャリアである内閣情報官の指揮下で動くということに落ち着きそうだ。

新組織発足を機に権益を拡大しようとしたのが公安調査庁だった。対外諜報のノウハウを密かに培ってきた調査二部傘下の調査官を、ごっそり新組織に合流させることを画策していたようだが、派遣人員は限定的になりそうだ。

外務省幹部はこう吐き捨てる。

公安警察の世界を知り尽くした著者が、「凶神」と恐れられた公安警察の元エースを主人公にして、諜報戦の世界を描く小説第二弾。本作では、北朝鮮と日本の諜報戦の闇が克明に記されている(第一弾『背乗り』も好評発売中)

「存在価値を高めようとした公庁のスパイごっこのおかげで、対外情報機関設置への国民の理解はますます遠ざかった。日本国民をスパイにしたうえ、リスクをわかっていながら中国に送り込んだ。しかも現地で拘束されたら、はいサヨウナラ。彼らは最悪な失敗例を国民に見せてしまった。総理以下、ご立腹だよ」

果たして、敵に捕らわれたスパイの末路はどんなものなのか。

外交官のカバーを持つ情報機関員なら外交特権を盾に逮捕されることなく帰国するができる。だが、NOCS(民間人を偽装した非公然機関員)や民間人協力者はそうはいかない。外国人協力者なら邦人保護の対象にすらならない。