【リレー読書日記・大林宣彦】伝えられなかった、私たちが「知るべき」戦争の姿

戦後70年、いまこそ「平和」への戒めを心に刻め
週刊現代 プロフィール

繋るべき人人は「近く」にいる

マーシャル諸島―終わりなき核被害を生きる』という本が出た。あの戦争までは「南洋諸島」と呼んで日本が統治し、親しんでいた島島。それが日本の敗戦によりアメリカの統治下に置かれ、米ソの冷戦時代に核実験の場とされた。ビキニ環礁には未だ里人は住めぬのである。

著者の竹峰誠一郎さんは、この「小さな国が今」「核軍縮の完全な履行を求めて国際司法裁判所に」「核保有九ヵ国を訴える行動に出た」ことを受け、この国の核被害の歴史を繙いていく。ここにもまた僕らの知らぬ、そして知るべき戦争の、今に繋る物語が山ほど潜んでいる。

この里では今も生活用水は雨水に頼っている。その空を汚染したらどうなるか。広島・長崎のように可視化可能な被爆、核開発に伴う目に見えぬ被曝とを「同じ地平に収め」、「核被害を訴える人びと」が「世界規模で結びつくことを志向した」「グローバルヒバクシャ」を著者はキイワードとする。

今でもモモタローやキンタローという、日本人名の里人が暮らす国。日本人には、決して遠くない国である。

50年前の初渡米の折、「ゲラウト・ヒア・ジャップ! 真珠湾を忘れないぞ」とホテルのフロントに追い出され野宿したロスでは、僕の『HOUSE』を劇場のオープニング上映作品に選んでくれた「シネファミリー」他で上映とトークの会を開き、堀之内総領事と会食しながら、「日本は映画を文化としてもっと輸出すべし」、などと盛り上がり、惨状の日本に帰国。

2015・9・19を終わりの日ではなく、新たな始まりの日とすべく、いろんなトークショーにも参加。新潟日報社は長岡花火の映画を共に創った新聞社だが、その主催の「戦後70年平和フォーラム」に出席。

真珠湾での長岡花火打ち上げにも同行した長岡の中学生たちの「平和宣言」を聴きながら、彼らの成長ぶりに感動。若者たちは歴史を真摯に学ぶから、人として賢く、美しく成長するのだ。

「戦争を知る人がおられなくなっても怖くはありません。僕らが学び、伝えればよいのですから」と語るのは、満州移民研究家の高橋健男さん。厚生労働省「身元未判明中国残留孤児肉身調査」の調査員でもあられる。ここにも歴史を学ぶ人がある。ご著書を戴いた。

「満洲二龍山開拓団の実像を、終戦から70年たった今、克明に解き明かす」、と帯にある。題名が美しい。『いくさ、あらすな』。

まことに、ふたたび!

おおばやし・のぶひこ/映画作家。11月にはニューヨークへ。エール大学、ハーバード大学で自作の上映と講義。ジャパンソサエティにより自作の特集上映が組まれます。

※この欄は大林宣彦、堀川惠子、熊谷達也、生島淳の4氏によるリレー連載です。

『週刊現代』2015年10月31日号より