どんなに頭がよくても、経験があっても、集団になると顔色を窺うのが人間。事の異常さから類推はできる。ありえない不正に走ったのだから、会社の中は腐りきっていたのだろうと。ただ、経営トップたちの視点は「素人」とは違う。彼らの目には、また別の風景が見えていた。
組織は難しい。世界でも指折りの優秀な人材を結集しても、不正に手を染めるような負の組織に堕ちてしまう—。
そんなことを痛感させられる事件が、今夏、立て続けに起こった。
一つは東芝。
不正な会計処理による利益のかさ上げが行われていたことが明るみに出て、歴代3社長が退任に追い込まれる騒動に発展。創業140年で築き上げた信頼とブランドを一瞬にして失った。
もう一つは独フォルクスワーゲン(VW)。
米国での高い排ガス規制をクリアするため、主力のディーゼル車に不正装置を搭載していたことが発覚。いまも不正がどこまで広がっていたか予断を許さない状況で、独司法当局が経営陣の刑事責任を追及する可能性まで浮上してきた。
ともに兆円規模の売上高を誇り、世界に抱える従業員は数十万人単位。「世界有数のグローバル企業」との名声をほしいままにしてきた両社はなぜ、前代未聞の不正を犯してしまったのか。
今回本誌は、日本を代表する大企業の経営トップ13人に、「東芝&VW事件」をどう見るかを取材した。すると、メディアで指摘されているような背景説明とはまったく違った視点がいくつも飛び出した。