柔道、ラグビー、組体操・・・青少年のスポーツ事故はなぜ減らないのか? ~感動の誘惑に負けず正しい情報の共有を

青少年スポーツ安全推進協議会 基調講演より
佐藤 慶一 プロフィール

組体操はなぜ巨大化・高層化してきたのか

柔道事故よりも昨今注目を集めるのが組体操だ。9月、大阪府八尾市の中学校の体育祭で起きた組み体操事故(10段ピラミッドの崩壊)も記憶に新しい。内田さんは昨年5月から体育祭の時期(5月と9月)に組体操の問題を訴えてきたものの、昨年9月には高校で11段という最高記録が出ている。

幼稚園で6段、小学校でも9段――。巨大化・高層化に加え、組手の低年齢化も進んでいる。小学校の体育的活動のなかで組体操の事故は3番目に多い(2012年は6533件。日本スポーツ振興センター調査)。内田さんは「トップ10に入る種目のうち、組体操のみが『学習指導要領に記載がない』ことを強調した。

そんな組体操では、体で重要な部位(頭と首と腰)をケガすることが多い。代表的なパターンも「上部の子どもが落下し地面に激突」「上部の子どもが下部の子どもに激突」「塔が内側に崩れて重なり落ちる」の3つに分けられる。学校はまわりの先生を増員しているというが、ピラミッドは内側に崩れるため無意味だという。

コピペのように続く組体操の事故の背景には、現実に向き合わない多くの人たちの存在がある。

「組体操は『いいもの』『感動するもの』だと思われてきたから、いまも続けれられ巨大化を果たしてきた。まずはその感動の呪縛を覚ますこと。一体感や感動があってもいいが、代償やリスクを縮小する必要がある。組体操はスポーツの光と影がよくわかる事例だ。ピラミッドの次はタワー、もしくは段数を減らしたアクロバティックなピラミッドに向かうだろう」(内田さん)

内田さんは文科省に組体操の段数制限を求めるため、署名プラットフォーム「Change.org」でオンライン署名を集めている(賛同者は1万人超)。「大阪市を代表としていくつかの教育委員会が段数制限を発表したが、それでもほとんどの自治体では変わっていない。来年の運動会シーズン前、1~2月に署名を提出できたら」と巨大化する組体操(とそのブーム)を引き止めるべく活動・提言を続ける。

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事例を知っていれば、防ぐことができたのではないか。この出発点から設立を迎えた青少年スポーツ安全推進協議会。多分野の専門家が集まるが、主役はあくまでも青少年だ。さまざまな言説や情報が流れるなか、専門家が正しい情報を流していくことが急務である。

本来、任意で参加する部活動の競技化によって、教育の場としての役割は形骸化している。いま存在する安全は、だれかの犠牲で成り立つ非常に脆いものだ。はたして、スポーツにおける安全と強化は両立されうるのか。子ども、親、指導者、教師が正しい知識と情報を身に付けることでその両立に一歩前進するのだろう。

ちなみに日本臨床スポーツ医学会は「頭部外傷10ヶ条の提言」をネットで無料公開している。実は、頭を強く打っていなくても脳震盪は起こりうる。未来にスポーツ事故の当事者にならないよう、このような資料に触れておくことも大事になるだろう。