武田砂鉄と藤原新也が語る「わかりやすさ」への抵抗感
〜現在を躍進させる「言葉」を取り戻せ!

佐藤 慶一 プロフィール

ウェブメディアは受け手の体系を変えられるか

「フラット目線」への違和感は、ネットコンテンツに対価が払われにくいという話題へとつながった。藤原氏は「紙の時代は、書き手がものを書けば、読み手が木戸銭を払ってそれを読んだ。対価が立場の違いを担保していた。身銭を切れば、身構えも、うやまいも生じる。木戸銭がなくなったネット社会では、書き手を軽んじるようになったと思う」と、対価が発生しないことの不健全さを指摘した。

武田氏はネットでも多く文章を発表するなかで、たびたび「長い」「不快だ」と言われてきたそうだ。「文章が『長い』理由は『長いから』よりほかになく、『不快』と言われても別にこちらは『快』を配給しようとはしていない。なのに、『なんで読者の側に歩み寄ってきてくれないの?』という気配が絶えることはない」と、ウェブメディアのジレンマにこうつなげた。

「最近では取材費を出すウェブメディアもあります。出版界からの『ウェブはダメ』で済まそうとする言質にもうんざりします。ウェブ記事は、時間をかけて書き手の視点・言葉で醸成していっても、付け焼き刃的な言葉のほうからコンテンツに火がついてしまう。受け手の多くが突発的な喜怒哀楽を待ち構えているならば、作り手の意識が変わっても、その体系を変えていくのがむずかしくなる」(武田氏)

だれでも情報発信できるネット時代だからこそ、紋切型の言葉にどれだけ自覚的になれるのかが重要になる。言葉を取り戻し、画一化する表現に対抗していくことで、市民と社会とのかかわりも少しずつ変わっていくのかもしれない。

(文・佐藤慶一/写真・小松崎拓郎)

『紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす』
著者: 武田砂鉄
(朝日出版社
、税込み1,836円)
「育ててくれてありがとう」「国益を損なうことになる」「会うといい人だよ」「ニッポンには夢の力が必要だ」「うちの会社としては」……日本人が連発する 決まりきったフレーズ=定型文を入り口に、その奥で硬直する現代社会の症状を軽やかに解きほぐす。初の著作、全編書き下ろし。第25回(2015年度)Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。
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