勝新流ギャンブル、セックス、女の口説き方 ~最後の「弟子」が見た勝新太郎・男の生きざま

田崎健太『偶然完全 勝新太郎伝』後編
田崎 健太 プロフィール

勝新流セックス

ぼくの仕事は質問と勝の言葉をパズルのように組み合わせていくことだった。勝の言葉が持っている抑揚と間を生かそうと、ぼくは音読をしながら原稿を書いた。

書き上げた原稿をファックスで送ると、ぼくが事務所を訪ねる前に、勝は鉛筆で修正を入れていた。直しは丁寧ではあったが、中には日本語としておかしくなってしまう箇所もあった。

「勝さん、ここを直すとおかしいです」
ぼくは勝が書き込んだ部分を指さした。
すると、勝は目をかっと見開いた。
「お前、俺の直しが気に入らないっていうのかい?」
ここで引き下がるわけにはいかない。黙って勝を見つめると、彼は視線を外してふっと笑った。
「お前は、黒澤より偉いな。黒澤は俺にそんなことを言えなかったよ」

勝の表現は映像的で、文章を生業とする人間が使う言葉とは違っていた。
性行為は、勝の手に掛かるとこうなる。

「女っていうのは、男を愛してくるってぇいうと、だんだん男を包みたい、最後の一滴まで絞るようなセックスに変わってくるんだよ。淫乱でそうなってくるんじゃなくて、愛しているからそうなってくる。

ああ、もう、あたしぃ──いやっ、いーっ、いーっ。

なんてうなりだした時、中が欠伸して、洞窟になっちゃうなんてのもある。肉がぶわっと壁にくっついちゃう。サーカスのテントのドームみたいになって、オートバイでぐるぐる、ぐるぐる回る曲芸ができるぐらいの壁になっちゃって、ドームの真ん中で麻雀なんかしているような女の人もいるんだ。

そのうち、その壁がだんだんちっちゃくなっていって、巾着みたいになっちゃって、その中に入ったらもう生きて出られねぇんじゃねぇか、って変わってくる。
助平、淫乱だからじゃなく、その男を愛しているからそうなるんだ。男の命の泉の一滴まで絞りとろうとする女の本能は凄いぜ」

身ぶり手ぶりの入ったこうした話は酒を飲みながら聞いた。

勝が好んでいたのは、テキーラの入ったショットグラスを逆さまにしてグラスの底に置き、上からビールを注ぐ、サブマリンという飲み方だった。グラスを傾けると、少しずつテキーラが漏れ出てくるのだ。ビールの苦みに少し甘いテキーラが混じって口当たりがいい。

いつも勝は芝居のことを考えていた。勝の部屋ではテレビがつけっぱなしになっており、勝はリモコンを握り頻繁にチャンネルを変えた。ワイドショーに記者会見で弁明している人が出ていると、こいつを見てごらんと指さした。