勝新流ギャンブル、セックス、女の口説き方 ~最後の「弟子」が見た勝新太郎・男の生きざま

田崎健太『偶然完全 勝新太郎伝』後編
田崎 健太 プロフィール

お前はC級、俺もC級

自分が話すだけでなく、ぼくのことも聞きたがった。

勝は週刊誌にはいつも目を通しており、激しく部数を競っていることを知っていた。ぼくは他の週刊誌、特に週刊文春に苦労させられたことを話した。ある人物に取材を申し込んで、こちらは完全に断られているのに、翌週の週刊文春に独占手記が載っていたこともあった。

「ぼくも手紙を置いてきたりと工夫しているんですけれど、文春の方に出たがるんですよね」
「どうしてなんだ?」
「文春の記者の書く手紙が上手いという話は聞きます。でも、それ以上に文春と言えば、文芸の印象もあるし、イメージがいいからじゃないですか?」

「文春はA級ということか?」
「A級かどうかは分かりませんが、ポストより印象はいいでしょうね」
勝は、どんと机を叩いた。

「だから、俺はポストで連載をするんだよ。俺の映画はC級だ。ポストもC級。でも、A級の黒澤の映画よりも、お客さんが喜んでくれるのは、C級の俺の映画だ。C級だからいいんだよ」

週刊ポストは、ヘアヌード写真で部数を伸ばしていると文春の人間たちから揶揄されていた。もちろん、そうした面もあったろうが、記事の内容でも負けてはいない自信はあった。ただ、勝にC級と言われると、それでもいい気がした。

映画界での勝の噂を聞いていた連載班の上司は、原稿を早めに仕上げ、出来れば数週間分は先行しておくようにと言った。そのため、連載班で長く仕事をしている編集プロダクションの人間が取材に同行し、原稿をまとめることになっていた。

午後から始まった取材は数時間に及び、夕方になっていた。

「私が、読者から来た質問のような形で今日の取材を原稿にします。私は次があるので今日はここで」

と編集プロダクションの男が先に引き揚げていった。ぼくはどうしようかと考えていると、勝が腰を浮かせた。

「今日、時間あるか?」
「はい」
「じゃ、飯でも行くか」
勝とぼくは、飯倉片町の交差点に近いステーキハウスに向かった。