ヤクルトスワローズにはなぜアンチがいないのか? ~みんなに愛される不思議なチームの謎に迫る

週刊現代 プロフィール

「スワチュー(スワローズ中毒)」を自称する歌舞伎役者の坂東亀三郎氏は、「ヤクルトのそんな家族的な温かさが好きだ」と語る。

「真中監督を筆頭に、コーチ陣も高津臣吾さん、伊藤智仁さん、池山隆寛さんなど、ヤクルト出身者で固められているのがいいですよね。現役時代に応援していた選手が引退して、監督やコーチになるので、親子で球場に来ても楽しめる。『あのコーチは現役時代すごいバッターだったんだぞ』と子供に説明するお父さんを見ていると、微笑ましい気持ちになりますね」

国鉄スワローズ時代からのファンだという映画監督の崔洋一氏も続ける。

「ヤクルトは昔からカネがないので、その分、選手を大切に育ててくれる。高卒の選手が多いのも好感が持てるね。カネにあかせて選手を集めてないから、選手たちも質実。もちろん相手チームの主力をカネで引き抜くこともしないから他球団に恨まれることもない。スワローズは『品の良いチーム』なんだよ」

勝つことだけを求めない

親会社のクリーンなイメージも大きい。選手の年俸の原資となっているのは、ヤクルトレディのおばちゃんが販売している「ヤクルト商品」。その一本一本が選手の給料となっている。元ヤクルトの選手で、現在は本社の直販営業部で課長を務める青柳進氏が語る。

「大人から子供にまで親しまれている、ヤクルトの商品イメージは大きいと思います。引退後、本社で働くようになって、いかにスワローズが愛されているかに気づきました。仕事でいろいろな所に伺いますがスワローズネタはつきませんね。野球しかしてこなかった自分を、こうして本社で働かせてくれた球団には本当に感謝しています」

親会社の社風も影響しているのだろう。ヤクルトはひたすら「勝利」だけを求めるチームではない。だから弱い時期も長い。事実、今季優勝したとはいえ、その前は2年連続最下位だった。

しかし、ヤクルトファン歴30年以上の脚本家・ジェームス三木氏は、そんな「弱いヤクルト」が大好きなのだと言う。

「正直、今年優勝するとは思わなかった(笑)。僕は何事においても弱者に肩入れしたくなる性分なんだよ。強者と違って、弱者は不遇だから。義侠心のようなものかな。関ヶ原の戦いでも勝った徳川家康より、負けた石田三成に惹かれる。

巨人とヤクルトの関係もそれと似ていて、ヤクルトには弱者の『哀愁』を感じる。もちろん選手は一生懸命戦っているんだけど、結局は弱いので負けてしまう。でもだからこそ、応援のしがいがある。

ヤクルトには負けて悪態をつく選手はまずいない。負けると、しょんぼりしている。そんな姿をみるとファンとしては『なんとかしてやりたい』と思うんだよな」

たとえ弱くても下品なことはしない。そういうチームだからこそ、ファンも「大人」が多い。東京ヤクルトスワローズ・ファンクラブの名誉会員で、歌手のさだまさし氏もこう語る。

「神宮のファンが、自軍の選手や相手チームにヤジを飛ばすことはほとんどないですね。敵チームであってもいいプレーは褒める。だからアンチも少ない。'85年に阪神が神宮のヤクルト戦でセ・リーグの優勝を決めた際、ヤクルトの応援団が『阪神ファンのみなさん、日本シリーズも頑張ってください』と書いた横断幕を出したくらい(笑)。

まあ、そこがヤクルトの弱さに繋がっているのかもしれないけど、それでもいいんです。負けても気持ちがいい。それがヤクルトなんだから」