世界を救う新エネルギーを目指せ!
再生可能・危険性ナシの「マグネシウム燃料電池」をご存知か?

田中 周紀
マグネシウム燃料電池(荷台に搭載)で走る電気自動車を運転する小濱名誉教授

「異能の持ち主」

「マグネシウム循環社会構想」を提唱した小濱氏は1945年、岩手県釜石市の生まれ。69年に東北大工学部機械工学第二学科を卒業したあと、同大大学院で流体力学など航空宇宙工学分野の研究を続け、同大大学院の教授に就任。09年に退官し、現在は名誉教授の地位にある。

小濱氏は、関係者の間では“異能の持ち主”として名を知られる研究者だ。小渕恵三首相(当時)が2000年に創設した「ミレニアム・プロジェクト」に、高速走行する非接触型の超省エネ型高速輸送システム「エアロトレイン」を提出すると、32倍もの倍率を突破して採用に。

この際に小濱氏は、機体を軽量化する狙いで難燃性マグネシウム合金を使うことを計画したが、軽量構造体に作り上げるには強度がまだ不十分だったため、実際には使わずに終わった経緯がある。

さらに国の補助金を受けて07年に開発した、2人乗りの「エアロトレイン3号」では、時速200㌔の浮上走行に成功。新たに開発された難燃性マグネシウム合金製の中空形材と平板をこの機体に使った際に、小濱氏はマグネシウムの発電物質としての性能に興味を感じる。

そして余った難燃性マグネシウム板材を活用し、近くの海から海水を汲んできて実験を始めた。

マグネシウムはカメラ撮影のフラッシュに使われるほど、反応性が高くて燃えやすい金属だ。アルミニウムのような電気精錬ではなく、熱で精錬できる点が特徴だが、現段階で実用化されている精錬法は、大量の石炭を燃やして1200度の高熱で加熱するピジョン法しかない。

しかも、これは膨大な量の二酸化炭素を排出することがネックとなり、先進国では導入できない。

しかし、東北大の研究チームは、過去に直径10㍍の太陽炉を使い、3727度の高熱を作り出すのに成功している。この実績を受けて東北大はニコンと共同で、1200度の高熱でも二酸化炭素が全く出ない、クリーンなマグネシウム精錬法を開発した。

この精錬方法を産み出したことが、マグネシウム燃料電池を開発する決め手になったという。