妊婦死亡、流産、14歳の母親……知られざる産婦人科の現場から

大反響漫画『透明なゆりかご』

対策マニュアルが存在する意味

---死亡事故の後、院内ではカンファレンスが開かれています。カンファレンスとは具体的にどのようなことをするのでしょうか?

看護師がおこなうカンファレンスの目的は問題解決です。どうしてこういう事態になってしまったのかということを当時の状況や事実と照らし合わせ、論理的に分析する会議のようなものです。

最初はアセスメントといって、看護過程に関する情報を共有します。「適切な処置が問題なく行われたか」などだけでなくと、分単位で患者さんの容態の変化を把握し、少しでもおかしなことはなかったかを見つけていく作業をします。

問題点を見つけることができれば同じことは二度と起こりません。「カンファレンスをきちんと行うことで防げるものがあるなら防ぎたい」と皆思っているので、感傷にひたることもなく冷静。まるで学校の授業を聞いているかのようでした。

けれど話し合った結果、この問題は分娩前に発見することはできなかったという結論に至りました。

---そういう場合はどうするのですか?

この時は緊急時のマニュアルが作成されました。基本は自己判断をしないこと。簡単に安全とか大丈夫とか決めつけず、少しでも数値がおかしいと思ったら先生に相談する。それは通常の出産もハイリスク出産も同じです。

他には双子またはそれ以上の多子出産の場合、緊急時の対応ができる大きな病院に紹介状を書いて帝王切開で安全に産んでもらうというのもありましたね。

マニュアルは事故などを未然に防ぐことができます。けれどマニュアルがあるということは、前例があったということ。

あの場にいたひとりひとりが思った「もしあの時、事前に総合病院に転院させていたら」「救急車が渋滞で遅れなければ」という、たくさんの“たられば”という後悔がマニュアルの項目にあらわれているんです。彼女の死を通し、皆より一層慎重になりました。

絶対的な正解なんてない

---最新2巻では妊婦死亡事故以外にも流産や14歳の母親など、産婦人科の暗い面について描かれています。今後描きたいと思っていることはありますか?

子供を殺してしまったお母さんにとても興味があります。

2巻で、母親に売春まがいのことをさせられている栗山さんという女の子のお話を描きました。栗山さんのお母さんは妊娠した時、誰の子供かわからなかったそうで、長年夜の仕事をしてきて、女の体を使うことに抵抗感の薄い人でした。自分がやってきたから娘の栗山さんもできるはずだと思っていた節があったんです。

彼女のことを描いてから、母親のバックボーンと母性には何か関わりがあるのかとずっと考えています。たとえば子供を殺した母親はどんな過去があって、親からどんなことをされたのか、などです。

私には子供がいませんし、自分の中に母性のようなものを感じたこともありません。子供がいても、かわいいと思えなくて苦しんでいるお母さんもたくさんいます。母性についてはどれだけ考えても全然答えが出ない。だから描けるかわからないのですが、いつか描きたいと思っています。

取材・構成:松澤夏織

沖田×華 (おきた・ばっか)
1979年、富山県生まれ。高校卒業後、看護学校に通い、22歳まで看護師として病院に勤務。その後、風俗嬢になって富山、金沢、名古屋で働く。2008年、『こんなアホでも幸せになりたい』(マガジン・マガジン)でマンガ家として単行本デビュー。

沖田×華透明なゆりかご
(講談社、税込み463円)
大反響を呼ぶ真実の産婦人科医院物語、早くも第2巻登場!!

amazonこちらをご覧ください。

楽天ブックスこちらをご覧ください。