人は死んだらどうなるのか。なぜわれわれは死ななければならないのか。
「輪廻転生」という考え方は古来、世界各地にあった。現在でも、4割以上の日本人が「生まれ変わりはある」と考えている。海外には「前世の記憶」を検証する大学の研究所もあるし、「前世の記憶」を語る事例も後を絶たない……。
人類と「死」の関係という大テーマに挑んだ話題の新刊『輪廻転生』より、前書きを特別公開します!
はじめに
輪廻転生──死んでまた新たな肉体に生まれ変わる──という観念の起源は古く、少なく見積もっても2500年はさかのぼることができます。古代より一度も途切れることなく、再生の観念はつねに人類とともにありました。
しかし何より興味深いことは、この生まれ変わりの物語が現代社会においてもなお、広く世界中の国々で支持され、信奉されているという事実です。それは生まれ変わりの教義をもつ仏教やヒンドゥー教の国々に限った話ではありません。
たとえば2005年から2013年にかけて米国のハリス社が行った世論調査によると、「神」「奇跡」「天国」といった宗教的観念への信仰率が軒並み減少しているなかで、アメリカ人の「輪廻転生」への信仰率はむしろ増加しています。
あるいは後に見るように、国際社会調査プログラム(ISSP)の2008年のデータによれば、イスラエル在住のユダヤ人のじつに53・8%が「輪廻転生はあると思う」と回答しています(ちなみに日本は42・6%でした)。
一部の人びとにとっては荒唐無稽なファンタジーにしか感じられない輪廻転生という考えが、なぜ現代においてもこれほどまでの支持を得ているのか。私はこの謎を解明すべく、大学院で生まれ変わりをテーマに据えた修士論文を執筆することにしました。
ところが研究を開始して早々、私は壁に突き当たることになります。というのも、個別的な思想や信仰を専門的に扱った論文は存在しているものの、生まれ変わりそのものを考察の対象とするような先行研究がほとんど存在していなかったからです。
そもそも輪廻転生とは何なのか、という根本的な疑問に答えてくれる論考は見つかりませんでした。