俳優・ラジオパーソナリティ 大竹まことさんが選ぶ「わが人生最高の10冊」

伝わりづらいものの余韻って、いいよね
週刊現代 プロフィール

渥美清さんの凄みに触れて

次の髙村薫の『照柿』は、合田という高村さんのいつもの刑事が出てくる話なんだけど、本を広げたとたん工場地帯の夏の、死ぬほどの熱気みたいなものが伝わってくる。タイトルの「照柿」は溶鉱炉の炎の色。

『照柿 上・下』
上はこちら
下はこちら

暑さ。青いスカートの女が駅のところでチラッと見えたのと、照柿色。この三つが張り付くように印象的に残っている。

7位の『おかしな男 渥美清』。小林信彦さんが書いた評伝です。俺は1度も共演したことはなかったけど、昔、代官山で声をかけられ、「誰?」と思ったら渥美さんだった。

「この間のドラマよかったですねえ」とか、あの渥美さんに言われて、もう冗談だろうと思ったんだけど。それはさておき、渥美さんは、これはという舞台や映画はこっそり見ていたらしい。それも舞台は初日と中日の2回見たと書いてある。

ロケ現場でのエピソードが紹介されているんだけど、ツッパリ連中が撮影のジャマをしてスタッフが手を焼いていると、「ちょっ」と手招きして、収めてしまう。一言二言に凄みがあるんだよね。

そらぁもう渥美さんの放つ空気というのは尋常ではない。でも、コワイもの見たさで引き寄せられる。そのへんのところをこまやかに描いてある。

渥美さん自身も「役者は狂気をもっていないといけない」と言っているんだけど、実は、すごい孤独でさぁ。家族のことは、人には一切話さないし。でも「寅さん」を観て、だれも、あの人のことをそうは思わないじゃない。

小林信彦さんは、俺のラジオをよく聴いてくれているらしく、「うとうとするからいい」って。褒め言葉だとは言うんだけどねぇ(笑)。 

(構成/朝山実)

おおたけ・まこと/'49年東京生まれ。「お笑いスター誕生」でデビュー後、'79年コントグループ「シティボーイズ」結成。「大竹まこと ゴールデンラジオ」(文化放送)パーソナリティとして活躍している
大竹まことさんが選んだ一冊

ナイフの行方
山田太一著
KADOKAWA 1400円


「放映されたドラマの脚本集です。人を刺そうとしていた若者を捕まえた男が、彼を自分の家に閉じ込める話。理由なき殺人への焦燥感も含め、80代の脚本家が、いま自分に何ができるのか考えて出したメッセージだと思う」

=> Amazonはこちら
=> 楽天ブックスはこちら



『週刊現代』2015年10月10日号より