常総大水害から1ヵ月 
極限状態で自衛隊ヘリが救助した「2匹の犬と50代夫婦」を訪問

初めて犬の名前を明かす
週刊現代 プロフィール

雨は激しさを増し、現場には防災服を着た市役所の職員も駆けつけていたが、「土嚢がないから、どうしようもない」と言われたという。そうこうしている間に、氾濫した鬼怒川が堤防を越え、やがて滝のように水が流れ出した。羽鳥さん夫婦は、急いで外にいた犬を連れて、2階のベランダに避難した。

「突然のことで、貴重品は何も持ちだせなかった。実家に避難するため、とりあえずバッグにタオルとパジャマだけを詰め込んだぐらいで」(奥さん)

家が崩壊するのはあっという間だった。柱が折れるバリバリバリという音は、今も耳に残っている。奥さんが声にならない悲鳴を上げた次の瞬間、1階部分が流され、急にベランダが下降。その衝撃で奥さんは濁流の中に頭から落ちてしまった。必死の思いでベランダに這い上がり、九死に一生を得た。

なんとか流されずに済んだ二人は、ご主人がボンド、奥さんがリヤンを抱きかかえ、屋根の上で救助を待った。

「暴れてリードが首から抜けてしまう可能性があったので、抱きかかえていたの。とりわけリヤンが興奮状態で暴れるから、体中アザだらけになっちゃってね」(奥さん)

いつ流されるか分からない上、犬もいる。羽鳥さん夫婦は緊張の連続で生きた心地がしなかったという。ヘリコプター隊に救助されたのは15時頃。屋根に上ってからすでに3時間が過ぎていた。

「自衛隊の方が助けに来てくれて、『もう大丈夫ですから』と言われた時は本当に嬉しかった。でも続けて『申し訳ないのですが……』と言われたので、犬は連れて行けない、という意味だと思った。

ところが、次の言葉は『バッグの中味を出していいですか。僕が運びますので、ここに犬を入れてください』というものでした。バッグの中にはタオルとパジャマしか入ってなかったけど、自衛隊の方は貴重品が入っていると思ったようです。極限の状況での気遣いに感動しました」(奥さん)

「お前らを絶対死なせない」

実際に救助に当たった第12ヘリコプター隊の中村洋介3等陸曹(26歳)は、救出時の状況をこう振り返る。

「ご夫婦から直接『犬も一緒に連れて行ってほしい』との申し出はありませんでした。しかし、お二人の様子を見て、犬もご夫婦の家族だと感じたので同時に救うべきだと、その場で判断しました。バッグの中に犬を入れてもらったのは、より安全に救助するためです。

最初は犬たちも怯えていましたが、ヘリコプターの機内では、大人しく落ちついていましたね」

自衛隊員の機転により、2匹の犬と夫婦は無事救出。多くの人の感動を呼んだ一方で、ネット上には、「犬を一緒に連れて行くなんて危険すぎる」、「犬のせいで他の人の救助が遅れた」など批判的な声も挙がった。