組織の能率を低下させる「言い訳優先人間」との闘い方

野口 悠紀雄 プロフィール

これは特別の統計的な手法や特別の分析モデルなどを必要としない極めて簡単な方法です。ITの進歩によって、データの分析作業は一昔前に比べると極めて簡単になりました。回帰分析などの統計的な手段に頼る必要は必ずしもありません。

学術的な論文を書くのであれば理論的に厳密な方法をとる必要がありますが、仕事の能率を向上させようというのであれば、必ずしも理論的厳密さにこだわる必要はありません。

第2の方法は、コアを見つけ出すのが上手い人を真似ることです。会社の中には、ヒット商品や企画を連発したり、どの地域を担当しても必ず一定の成績を上げる人がいます。こうした人々は、コアを見抜く「嗅覚」や「眼力」を持っているのでしょう。

できればそうした人に直接に教えを乞うのがいいのですが、彼れらは忙しく、暇はないのが普通でしょう。

それなら、その人のやり方を見て、方法を盗めばいいのです。昔から、名人の技というのは、弟子入りをして盗むものでした。現代の世界では、弟子入りする必要はありません。会社の日常の仕事を通じて、それと同じことができるからです。

黄金のハクチョウを見出せるか?

起こる確率は非常に低いけれども、いちど起こると重大な結果をもたらすものがあります。例えば、原子力発電所ですべての電源を喪失するような事態は、発生確率が非常に低いものです。しかし、いったん起これば、重大な事故が生じます。

こうした事故は、「ファットテール」とか「テールリスク」と呼ばれます。あるいは、「ブラックスワン」と呼ばれることもあります。

『「超」集中法 成功するのは2割を制する人』には、『「超」整理法』や『「超」勉強法』のエッセンスも紹介されている

まれにしか起こらなくても、被害が甚大である場合には、決して無視してよいわけではありません。生じた場合の被害を考慮すれば、それらを重視して扱う必要があります。

つまり、「テール」という言葉はミスリーディングであり、「シビアアクシデント」と呼ぶべきものです。確率の小ささに惑わされることなく、その影響の大きさを考慮する必要があるのです。

ところで、ブラックスワンの議論では、通常はマイナスの効果をもたらすものが取り上げられることが多いのですが、プラスの結果をもたらすものもあります。例えば、新しい技術の中にはそうしたものがあるでしょう。それらは、「黄金の白鳥」と呼ぶことができます。

では、どうしたら「黄金の白鳥」を発見することができるでしょうか? この問題は、本書では十分に扱っていません。それについて論じるのは、将来の課題だと考えています。

野口 悠紀雄
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書に『情報の経済理論』(東洋経済新報社、日経経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、サントリー学芸賞政治・経済部門)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、吉野作造賞)、『「超」整理法』(中公新書)、近著に『変わった世界 変わらない日本』(講談社)、『戦後経済史』(東洋経済新報社)など