第11回ゲスト:藤田紘一郎さん(前編)
「サナダムシを自分のお腹で飼ってみたら、中性脂肪が落ちてメタボが解消され、健康体になりました」

島地 勝彦 プロフィール

宿主の健康は自分にとっても都合がいい

日野 それは世紀の大発見ですよね。大反響を呼んだんじゃないですか?

藤田 いや、日本の学会はほぼ黙殺でした。欧米の研究者のほうが興味を示してくれました。その後、学会に虫、ではなく無視されるなら、一般の人たちに直接知ってもらおうと思って書いた本が『笑うカイチュウ』です。これが予想外に売れたおかげで、私の研究が認知されることになったわけです。

結局、あの本はベストセラーになりまして、第11回 講談社科学出版賞をいただきました。私は講談社さんにも貢献しているんですよ。

日野 ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

島地 日本の社会は戦後、回虫を悪者として徹底的に駆逐する方向で進んできたのに、実はその回虫のおかげで人間はいろんなアレルギーから守られていたわけですか。私たちが子どもの頃は、今よりはるかに汚い環境で遊びまわっていたし、お尻から回虫が顔をのぞかせているようなヤツもたくさんいましたが、あれは悪者じゃなかったんですね。

藤田 種類にもよりますが、元気に遊んでいたのなら問題はなかったはずです。ところが、本がベストセラーになると、今度は「そんなに寄生虫が大事だというなら、自分で飲んで証明してみろ」という意地悪な人たちが出てきました。

島地 先生は学会のなかではずっと異端視されていたんですね。私の考えた格言「今日の異端は明日の正統」を地でいく人生だ。

藤田 正統になったかどうかは分かりませんが、そこまでいわれたら飲むしかないでしょう。それでサナダムシの幼虫を飲み、実際に自分のお腹のなかで飼ってみたら、花粉症にもならず、中性脂肪が落ちてメタボが解消され、至って健康な体になりました。

日野 あの、素朴な疑問なんですが、サナダムシが腸のなかにいると、栄養を横取りされるというか、人間が十分な栄養を摂取できなくなる、ということはないんでしょうか?

藤田 寄生虫というのは、それこそ人類が生まれたときからずっと共生してきたわけです。例えばサナダムシが健康ですくすく育つためには、宿主である人間の体がどうあるのが理想だと思いますか?

島地 私がサナダムシだったら、それは居心地がいいほうがうれしいですね。あ、そうか、まずは宿主の体が健全でないといけないわけだ。

藤田 そうです。栄養を横取りというのもありますが、十分な栄養を横取りするには、宿主が元気でいっぱい食べてくれないと困る。アレルギーにも、ガンにも、他のどんな病気にもなってほしくない。だから自分にとっても都合のいい体質に宿主を保とうとして、いろいろな体にいい物質を出しているんです。