スウェーデンにはなぜ「寝たきり老人」がいないのか

幸福度世界1位「北欧の楽園」に学ぶ老いと死
週刊現代 プロフィール

高福祉国家として知られるスウェーデンは、OECD(経済協力開発機構)が行う国別幸福度ランキングでも上位の常連だ('13年度はオーストラリアと並んで1位。日本は21位)。

スウェーデン人の平均寿命は81.7歳。日本人の83.1歳に比べれば短いが、それなりの長寿国である。にもかかわらず、この国には寝たきりになる老人がほとんどいないという。

子供と暮らさない

スウェーデンの高齢者ケアに詳しい東京経済大学の西下彰俊教授が語る。

「日本では寝たきり状態にある高齢者が150万人から200万人ほどいると言われています。一方、スウェーデンはそもそも寝たきりになる人がほとんどいない。いたとしても、終末期ケアが行われる数日から数週間の短期間だけです」

この驚くべき違いは、どこからくるのか?

スウェーデンの人が特別に健康的な生活を送っているというわけではない。例えば食生活。厳しい冬が長く、食材も貧しいため、北欧の食事は日本のそれほど豊かなものではない。東京にある北欧料理レストラン「ALLTGOTT」のオーナーシェフ矢口岳氏が語る。

「スウェーデン料理にはアンチョビに代表される塩蔵、スモークサーモンといった燻製、ニシンのマリネのような酢漬けなど塩分濃度が高いものが多い。日照時間が短く野菜もあまり採れないので、荒れ地でも育ちやすいディルのようなハーブ類を多用します。またアルコール消費量も多く、日本人と比べて健康的な食生活を送っているとはとてもいえません」

どうやら、食事・健康面に原因があるわけではなさそうだ。寝たきりゼロの秘密は、むしろ介護と医療システムそれ自体にある。

基本的な前提としてスウェーデンの高齢者は、子供などの親族と暮らすことをしない。夫婦二人か、一人暮らしの世帯がほとんどで、子供と暮らしている人は全体の4%に過ぎない(日本は44%)。

これは「自立した強い個人」が尊ばれる伝統に根差したもので、高齢者に限らず、若者も義務教育を終えた16歳から親の家を出て一人暮らしを始めるのが普通だ。だからといって家族関係が希薄というわけではなく、近くに住んで頻繁に交流する家族は多い。