「NY流おもてなし」を伝えたい――受講者数1500人超、“3次元”の料理教室はなぜ人気なのか

ニューヨークを舞台に「挑戦」する日本人――料理家・ひでこコルトン
公文 紫都
ひでこコルトンさん

「普通の料理教室は2次元」だけど「コルトン先生の教室は3次元」

料理教室を開くにあたり、日本人に馴染み深い「おもてなし」という言葉を使うことにしました。ニューヨーク流のおもてなしとは、具体的にどんなものなのでしょうか?

「ニューヨークのおもてなしは、一種のエンターテイメントでもあります。ゲストを退屈させないための工夫が盛りだくさんというか。ニューヨーカーはとにかくホームパーティ好きで、みんながいろいろなアイデアを盛り込んで、ゲストのみなさんをもてなします。

私がこれまで招かれたパーティーでは、レディー・ガガさんのモノマネをしているプロのエンターテイナーがゲスト参加していたこともあります。そのパーティーのホストは有名人の知り合いが多く、『今日はレディー・ガガさんがゲストで来ています!』と言われたときには、『え?本当に本人が来ているんじゃない?』とみんな一瞬目を輝かせていました(笑)

これはとても分かりやすい例ですけれど、ゲストを退屈させないさまざまなサプライズに加え、あえて異なる業種のゲストを招くことで、ネットワーキングの場としても機能させるのが、ニューヨーク流ホームパーティの特徴です。ここで出会った人脈がベースとなり、ビジネス上での付き合いや友人関係に発展していくからです。ニューヨーカーが実践しているこうした数々のおもてなしを、フードを通じて日本人に伝えていきたいと思いました」

コンセプトを固め、料理教室とイベントプランニングを主要事業に

個人会社「COLTONS NEWYORK」を起業。料理教室は始めてから5年になり、これまでに1500人を超える受講生が参加してきました。なかには、日本からお忍びで訪れる有名タレントや、コルトンさんの料理教室に参加するため、語学留学をしながらしばらくニューヨークに滞在する日本人女性もいたりするほど。そこまで多くの日本人を熱狂させる料理教室とは、一体どんな内容なのでしょうか?

「私の料理教室では、ただ単に料理を教えることはしません。空間を含めて、トータルでニューヨークらしさを感じ取っていただきます。ですからまず会場に入ると、料理を含めお花やキャンドルの香りを楽しんでもらえるよう、"嗅覚に訴えかける"仕掛けを施しておきます。そして音楽。これも私のクラスには欠かせない、パーティーの大事な要素なんです。

次にカクテルを提供するのですが、ここでもまずは目と鼻でガツンと味わってもらえるよう、リキュールに工夫を凝らして、『飲むパフューム』とでも言うかのようなカクテルをお出しします。味覚は最後にやってくるので、まずは視覚と嗅覚に訴えかけたいと思っているんです。ローズウォーターやラベンダー、ハーブなど使うリキュールはさまざまで、ここでも、『こんなカクテル飲んだことない!』とショックを受けていただくことが多いようです。

会社勤めをしていたころ、仕事帰りによく友達とカクテルを一杯飲んでいました。そうニューヨーカーはカクテルを好む人が多いのです。一口にカクテルと言ってもたくさんの種類がありますが、私はなかでもレストランやバーオリジナルのものに目が止まり、シグネチャードリンク(その店のおすすめドリンク)は必ずチェックしていました。数々のカクテルを試してきた経験を活かし、料理教室では、私のオリジナルカクテルも振舞っています」

会場に入った途端から、ニューヨーク流の"サプライズ"に満ちたおもてなしが振る舞われるコルトンさんの料理教室。料理だけでなく、テーブルトップを含む空間全てに対するこだわりは、「料理に繋がる世界は、"食べられるアート"」だという独自の考えに基づき発揮されています。

テーブルトップにパイナップルをあしらった、メキシカン料理教室

「日本の料理教室は、事前に調味量の分量が測ってあるなど、『料理教室とはこうじゃなきゃいけない!』と型にハマっていることが多いですが、ここはニューヨーク! そんな型は取っ払ってしまいます。テーブルトップに飾ったパイナップルを途中で一つ拝借して、料理に入れちゃうことだってあります。夏をテーマにしたテーブルでは、白い砂を置いたこともあるんですよ。これも驚かれました。え? 食卓に砂? って(笑)」

こうした驚きの連続を体験した生徒からは、「普通の料理教室は、"2次元"ですが、先生の料理教室は"3次元"ですね」と褒められることもあるそうです。五感すべてを使ったそれらのおもてなしに、「色々考えさせられます」という声も多いのだとか。

コルトンさんは、「これはニューヨークにいるのと近い感覚かもしれませんね」と説明します。ニューヨークは予想もしないところから新しい何かが生まれたり、衝撃が走ったりするので、固定観念にとらわれず常に感覚を研ぎ澄ましておく必要があるということのようです。

型にはまらないコルトン流ニューヨークスタイルのおもてなしは、ニューヨーク在住者だけでなく、日本で料理教室を主宰している同業者や、日本で暮らす一般人からも定評があるそうです。

「仕事を辞めて、わざわざニューヨークまで受講しに来てくださる生徒さんもいるんですよ」と言うのだから驚き。コルトンさんの持ち前の明るさとサービス精神、そして何より、限られた時間の中でも楽しんでおもてなしを学んでほしい、と随所に散りばめられた細やかな気配りが、多くの受講生を惹きつけて止まない魅力なのでしょう。