[ボクシング]
杉浦大介「“メイウェザー以降”の支配者は誰か」

〜次代を担う4大スター候補たち~
スポーツコミュニケーションズ

真価問われるワイルダー、やや人気先行のカネロ

デオンテイ・ワイルダー(アメリカ/ヘビー級/29歳/34戦全勝(33KO))

筆者の取材に応えるワイルダー。喋りのうまさにも定評あり。

 今年1月にWBC世界ヘビー級王座を勝ち取り、2007年以来、久々にアメリカに最重量級タイトルを取り戻した。見栄えの良い戦績が示す通り、両拳に宿るパワーは破格のものがある。強力アドバイザー、アル・ヘイモンが抱えるロースターの中でも、クロスオーバーのスターになるポテンシャルを秘めた選手はこのワイルダーしかいない。

 もっとも、29歳と遅咲きの新星の真価を疑う声が少なくないのも事実である。これまでの対戦相手のうちの大半は実績に乏しい二線級選手たち。6月の初防衛戦では無名のエリック・モリーナの右強打を浴び、ぐらつかされるシーンもあった(結果は9ラウンドKO勝利)。現代ヘビー級の支配者ウラディミール・クリチコはおろか、指名挑戦者のアレクサンダー・ポヴェトキンと対戦しても現時点では不利の予想が出されることだろう。

 ともあれ、ワイルダーは9月26日に予定されるヨハン・デュアーパとの2度目の防衛戦で地上波NBCに初登場する。同局がヘビー級タイトル戦を放送するのは、1985年5月のラリー・ホームズ対カール・ウィリアムス戦以来。莫大な視聴率を弾き出すことが有力の一戦で、どんなボクシングを披露するか。

 20歳でボクシングを始めた選手だけに、まだ伸びしろは残っていると見るべき。今後に急成長し、クリチコの壁を破るようなことがあれば、マイク・タイソン以来のセンセーションとなり得る。それだけに、その動向からもうしばらく目を離すべきではない。

 同階級の他の注目選手 アンソニー・ジョシュア(イギリス/25歳/14戦全勝(14KO))

サウル・“カネロ”アルバレス(メキシコ/ミドル級/25歳/45勝(32KO)1敗1分)

 アメリカ国内の商品価値の高さでは、すでにマニー・パッキャオをも抜き去った。意外にも母国での人気は微妙と聞くが、パワー、強敵との対戦を望む気概を持つ新ヒーローは新大陸のファンの心を捉えて離さない。まだ若いこともあり、HBOは次のPPVスターとしてカネロに高額投資を続けていくに違いない。

 もっとも、筆者も含め、この選手の真の実力に懐疑的なメディア、関係者は少なくない。アウトボクサーを苦手にしている感があり、メイウェザーに完敗、オースティン・トラウト、エリスランディ・ララにも大苦戦。“この3人には全敗したも同然”と切り捨てる記者もおり、パウンド・フォー・パウンド・ランキングなどで上位にランクされることは少ないのが現状だ。

コット(左)戦に勝てば、カネロの一般的な知名度はさらにアップするはずだ。Photo By Tom Hogan Photos/Roc Nation Sports/GBP

 11月の中南米ドリームファイトで対戦するミゲール・コットはタイプ的には噛み合いそうで、勝算は十分。その後、来年にもゲンナディ・ゴロフキン戦とのミドル級統一戦が実現すれば、“メイウェザー以降“では最高のメガファイトとなる。脅威のカザフスタン人王者の壁すら突破した場合には、カネロは全盛期のオスカー・デラホーヤに比肩するほどのスーパースターになるはずだ。

 ただ、それ以前にコットに競り負けてしまっても特に驚かない。また、どこかでアウトボクシングのできる実力派ボクサーに再び苦杯を喫する可能性も常に残る。やや人気先行のカネロにとって、いずれにしても今後数年の活躍が評価確立の鍵となってくるはずである。