「再発がん」からの生還
【特別インタビュー】なかにし礼

食道がんを克服して3年、再び病魔との闘いに挑む
週刊現代 プロフィール

がんが、どんどん消えていく

実は、病院の医師たちが最も神経をとがらせていたのがこの頃でした。穿破が一番起きやすいのは、手術をした日の夜なのだそうです。最初の晩を乗り越えたとしても、いつ気管支の壁膜ががん細胞に突き破られるか分からない。私が意識を取り戻す前、倅はそう説明を受けていたそうです。

私自身も、いつ死が訪れるか分からないと宣告されていました。

「一日一日、どう生き延びるかです」、「1週間単位で人生計画を立ててください」などと言われたのです。

手術から2日後、ICUから一般病棟に移ったなかにしさんは、切開した背中の激痛と猛烈な口の渇きに苦しめられたという。

一方で医師団は、気管支にへばりついているがんに対する一刻も早い処置が必要だと主張した。今度は抗がん剤治療の薦めだ。

手術から1週間後、ボロボロの状態でいったん退院したなかにしさんは、その翌週に再入院。1回が5日間ぶっ続けという抗がん剤治療に挑戦することになった。

がんとの闘いは、1度目よりも2度目のほうがしんどいものだと今回は痛感しました。

孤軍奮闘の末、一度は克服したのに、また逆襲を受けるのです。敗北感というべきか、虚無感というべきか、なんとも言いようのない感覚に襲われました。

がんに対する闘争心が湧いて来ず、気持ちが深く沈みこんでしまうのです。

そんなときに知ったのが、精神腫瘍科の存在です。がんとの闘いは、患者や家族の精神をも蝕むのです。そこをケアしてくれる診療科が、病院にはありました。

ここで薬を処方してもらい、私も家内もなんとか心の平静を保つことができたのでした。