「再発がん」からの生還
【特別インタビュー】なかにし礼

食道がんを克服して3年、再び病魔との闘いに挑む
週刊現代 プロフィール

手術の前日、妻と息子、娘に付き添われて入院し、その晩は家族で一緒に過ごしました。特に深刻な話をしたわけではありません。他愛もない話に笑いあい、穏やかな一夜を過ごしました。

翌朝、家族に見送られながら、私は手術室に入りました。

「じゃあ行ってくる」

最後になるかもしれない言葉は、そんな簡単なものでした。

麻酔から覚め、集中治療室で意識を取り戻したのは、手術開始から何時間も経ってからです。

「おお、生きているじゃないか!」

私は背中の痛みとともに、自分が生きている喜びを噛みしめました。

ところが、手術を担当してくれた医師に「がんは取れたんですか?」と尋ねたところ、返ってきたのは「取れませんでした」という言葉だったのです。

私が麻酔で眠っている間のことですが、胸腔鏡で取るのは難しいとの判断で、開胸手術に切り替えられていました。そこまでは想定内のこと。

しかし、いざメスで切り開いてみると、リンパ節のがんが気管支にびっしりと張り付いていて、メスを入れれば気管支を突き破ってしまいかねない状況でした。そこで、執刀してくれた先生は私の家族の意向を聞いてくれました。

そのとき、倅が言ったそうです。

「これ以上の危険は冒さないでいただきたい。やるだけのことをやっていただいたのでしたら、生きたまま返してください」と。

手術時間は4時間19分。がんは切り取れなかったけれど、とりあえず生還することはできました。しかし、危ない状況は何も変わっていない。それどころか、手術前より深刻な状況になっていたのかもしれません。