【沿線革命060】鬼怒川の堤防決壊は、上流ダムを適正に管理していれば起きなかった!?

阿部 等

上流4ダムの放流制御は適正だったのか?

私は、河川工学は門外漢で、ダムの放流制御の実務経験もないが、以上4つのグラフを見て大きな疑問を持たざるを得ない。

4つのダムとも、治水容量に余力を持ちながら、相当の放流を続けていた。下流での水位が異常に高くなりつつあることをダムの放流量に反映させないのだろうか。ましてや、10日12:50に堤防が決壊した後も、川俣ダム以外の3つは放流を継続していた。

川の流速の目安は、洪水時の山地流・大河川が2~3m/秒、大洪水時の河川が3m/秒以上とのことだ。9日9時頃~10日18時頃の間、4つのダムを併せて大量の水が放流されており、流速は秒速3mを上回るくらいだっただろう。

4つのダムから堤防が決壊した箇所までは約120kmである。流速が3m/秒強≒12km/時とすると10時間程度で達する。9日9時にダムで放流された水は19時頃に決壊した堤防に達し、付近の水位の変化データと合致する。

先に降水量を見たように、中流・下流域の雨量はそれほど大量ではなかった。水位を大幅に上昇させた雨の大半は上流で降ったものだった。ということは、上流4ダムが貯水容量の目一杯まで放流を抑えていれば、堤防の決壊は起きなかったのではないだろうか。

豪雨がいつまで継続するかは正確に予測できないので、放流を抑えて貯水し過ぎると、貯水容量に達した時点で一気に放流することとなり、下流でさらに大きな水害を起こすこととなるが、今回の結果を見ると放流し過ぎだったように見える。

また、「50年に一度」と言われる豪雨が予測される中、貯水量を事前に減らしておけなかったのだろうか。五十里ダムは貯水量を事前に夏季制限水位の半分程度まで減らしていたのに対し、他の3ダムは夏季制限水位を若干下回る程度にしていた。

気象庁が「過去に経験のない大量の雨」と言うほどの大雨が降ると予測されているなら、貯水量を事前に減らしても、その後に渇水で困ることはなかったはずではないだろうか。

専門家の見解を伺いたい

「鬼怒川の堤防決壊は、上流ダムを適正に管理していれば起きなかった」などと、今まで誰も指摘していない。

私は、川の下流の水量は上流のダムの放流の仕方次第だと20年近く前に実体験し、ずっと記憶に残っていた。

上・中・下流の降水量、河川水位、ダムの放流量を見る限り、放流量を適正に管理していれば、堤防決壊は起きなかったとしか思えない。残されたそれらのデータを精密に分析すれば、起きた事象を正確に把握できるはずだ。

そして、ダムの放流量を抑えていれば、河川水位の上昇をどれだけ抑えられたか、さらに、ダムの貯水量を事前に減らしていれば、河川水位の上昇をさらに抑えられたことを、確度高く予測できるはずだ。

門外漢でありながら、思い切った仮説を提示した。河川の専門家の方に、上記の分析をした上での見解を伺いたい。

※参考サイト
東京大学 生産技術研究所 沖研究室『2015年台風18号鬼怒川洪水関連情報』
http://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/Mulabo/news/2015/KinugawaFlood2015.html

  阿部等(あべ・ひとし) 1961年生まれ。東京大学 工学部 都市工学科卒。88年にJR東日本へ入社、保線部門を中心に鉄道の実務と研究開発に17年間従事。2005年に同社を退社し(株)ライトレールを創業、交通計画のコンサルティングに従事。著書『満員電車がなくなる日』。日経ビジネスオンライン「キーパーソンに聞く」が好評。FacebookTwitterにて実名で情報発信。交通や鉄道の未来を拓きたい方のために、交通ビジネス塾(http://www.LRT.co.jp/kbj/)を主催し、工学院大学オープンカレッジ鉄道講座(http://www.LRT.co.jp/kogakuin/)の事務局を務めている。
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