講談社ノンフィクション賞受賞作決定発表!
眞並恭介『牛と土 福島、3.11その後。』

「受賞のことば」と「選評」
週刊現代 プロフィール

選 評

現地取材を重ねて生まれた良作
後藤正治(ノンフィクション作家)

受賞作『牛と土』は、放射能汚染を蒙ったフクシマの牛たちのその後を追っている。安楽死処分を迫られつつ、なんとか牛を生かし、その意味を見出したい。「牛飼い」の心意気とやるせなさがよく伝わってくる。かけがえのない国土に与えた半永久的な汚染を知るとき、原発事故の途方もない罪深さに改めて思いが行く。3・11以降、現地取材を重ねるなかで生まれた良質の仕事である。作品のインパクトとしては少し弱いかなという印象を受けたが、最終、一致して受賞作に選ばれた。

ひみつの王国』は、児童文学の巨人、石井桃子の一世紀に及ぶ歩みを綴った大部の評伝である。日本の出版史をたどるという側面もあって、長く積み重ねてきた著者の取材の蓄積がうかがわれる。戦争協力の〝傷〟と戦後の開拓生活が石井の原点を成しているという指摘には首肯するものがあった。石井の歩みがすべて解かれたわけではないが、人の本質に迫っていくのが評伝であるとすれば秀でた労作と思えた。受賞に相応しい作品と思ったが、合意は得られなかった。

石の虚塔』は、考古学の研究者と発掘者たち、および偽りの発掘者を主人公にした作品である。読みものとしての面白さという意味では一番であったが、人々の考古学への情熱を、学閥や学歴の有無や人間関係のもつれから解いていくことにウエートが置かれ過ぎているように感じられ、薄っすらとした違和感がつきまとった。

映画の奈落』は、〝実録ヤクザ路線〟時代の東映、シナリオ作家、北陸のヤクザ一家の「挑戦」を重ね合わせて描いている。B級映画への著者の傾倒ぶりがよく伝わってきて興味深く読んだが、日本映画のひとときの光芒と衰退を描くという主題からすれば、裏世界の動向を重ねて詳述することが必要であったのかどうか。用語の使い方において気になる点もあった。