まだまだこんなものじゃない!「青色LED」の可能性とは

『天野先生の「青色LEDの世界」』
天野 浩 プロフィール

もうひとつは「エネルギー問題」です。日本はもうあまりGDPが伸びないから、電力の消費量はせいぜい横ばいか、あるいは下がっていくでしょう。しかし、世界に目を向けると、中国やインドなどのGDPが急速に伸びている国は、もっと電力が必要になってきます。

国際エネルギー機関(IEA)の調査によると、2020年くらいに世界の電力の供給量がGDPの伸びに対して追いつかなくなると言われています。要するに、世界で電気が足りなくなるのではないかということです。そこで登場するのが、窒化ガリウムを使ったパワー半導体です。

窒化ガリウム半導体は、現在広く使われているシリコンに比べて、電流を流したときの損失を10分の1に抑えることができます。

今、名古屋大学ではこんな試算をしています。LED照明による省エネ効果と、このパワー半導体による電力損失を小さくする効果を合わせると、日本の消費電力の16パーセントほどを省エネできると考えています。福島第一原発事故より前は、原発が日本の電力供給の3割ほどを占めていたので、その半分くらいになります。

電力が足りなくなるといわれている2020年といえば、東京オリンピックが開かれる年です。そのときに、非常に効率の高いLED照明と、パワー半導体を用いたシステムを提供したい。そのシステムを世界の皆さんに使ってもらいたい、というのが今描いている目標です。

「窒化ガリウム」が切り拓く未来とはどのようなものなのか。この本で読者の皆さんと一緒に考えたいと思います。

著者 天野浩(あまの・ひろし)  
一九六〇年、静岡県生まれ。名古屋大学教授。工学博士。八三年、名古屋大学工学部卒業、八八年、名古屋大学大学院工学研究科博士課程後期課程単位取得満期退学。名古屋大学工学部助手、名城大学理工学部教授を経て現職。学部生時代から赤﨑研究室に所属し、以降一貫して青色LEDの開発に取り組む。二〇一四年、青色LEDを発明した業績に対し、赤﨑勇博士、中村修二博士とともにノーベル物理学賞を受賞。同年文化勲章受章。
著者 福田大展(ふくだ・ひろのぶ)  
一九八三年、福井県生まれ。サイエンスライター、日本科学未来館科学コミュニケーター。東北大学金属材料研究所で太陽電池用の高品質な多結晶シリコンを作る研究に携わり、東北大学大学院理学研究科修了、修士(物理学)。中日新聞(東京新聞)記者を経て現職。記者時代は浜岡原発や地震防災などの取材を行った。
『天野先生の「青色LEDの世界」』
光る原理から最先端応用技術まで

天野浩=著
福田大展=著

発行年月日: 2015/09/20
ページ数: 224
シリーズ通巻番号: B1932

定価:本体  860円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)

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