まだまだこんなものじゃない!「青色LED」の可能性とは

『天野先生の「青色LEDの世界」』
天野 浩 プロフィール

LEDだけではない、「窒化ガリウム」の持つ可能性

2014年のノーベル物理学賞では、青色LEDの発明に対して賞が贈られ、「21世紀を照らす明かり」として脚光を浴びました。しかし、青色LEDに詰まっている窒化ガリウムの結晶は、まだまだ潜在能力を秘めた材料なのです。

じつは、LEDの中にある結晶には半導体が使われており、この半導体の仕組みが光る鍵を握っているのです。

半導体の歴史を簡単に振り返ってみましょう。最初にゲルマニウム(Ge)研究が進み、シリコン(Si)がそれに続きました。その後、ガリウムヒ素(GaAs)やガリウムリン(GaP)などのような材料が開発されます。この4つの半導体の登場する順番は、じつは後ほど詳しく説明する「バンドギャップ」が小さなものから大きなものへと並んでいます。

バンドギャップが大きな結晶は、原子どうしの結合が強いので高い温度で結晶を作る必要があります。そのため、昔は作るのが難しくできませんでした。しかし、結晶成長の技術の向上にともなって、徐々にバンドギャップの大きな結晶も、きれいにできるようになってきました。

私が学部の卒業研究生のころからずっと取り組んできた「窒化ガリウム」の一番の強みは、「バンドギャップが大きい」ということです。バンドギャップが大きいと、より大きな電圧に耐えられたり、より短い波長の光を生み出したりすることができます。

この特徴を生かせば、窒化ガリウムは既存のLEDだけでなく、ほかにもさまざまなデバイスに応用できます。たとえば、冷蔵庫やエアコンの中に使われているコンプレッサーなどの「パワー半導体」や、紫外線の中でもとくに波長が短い領域の深紫外線の光を放つLEDやレーザー、これまでは利用できなかった波長の太陽光も活用できる「窒化物太陽電池」などです。

エネルギー問題や水問題への貢献

私はこれから、窒化ガリウムを使って2つの分野に貢献したいと考えています。

ひとつは「水問題」です。国連児童基金(ユニセフ)の調査によると、地球上にはきれいな飲み水にアクセスできない人が6億6000万人もいます。さらに、トイレや風呂などの水を得られない人に至っては、24億人にのぼるようです。

この人たちに、深紫外線LEDの光でバクテリアやウイルスを死滅させる「水の浄化装置」を使ってもらいたいと考えています。実際、乾電池や太陽電池ほどの電力で動かせるものが、もうすぐ実用化されようとしています。あとは、いかに安く作るかという量産の技術が大切になります。