3分でわかる「郵政上場」~歴史上類をみない親子上場と、そのインパクトについて

何がすごくて、何が問題なのか
田中 博文 プロフィール

過去に例のない新規上場

今回の上場を複雑にしている理由として、過去に例のない親会社・子会社含めた3社同時の新規上場であることが挙げられます。

親子上場とは、ある会社の支配権を持つ親会社とその親会社に支配される子会社が同時に上場していることを指しますが、まずは親会社、子会社の定義を確認してみましょう。

上場審査に係る「親会社等」の定義は財務諸表等規則第8条3項に定められており、要約すると「親会社とは、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう)を支配している会社等をいい、子会社とは、当該他の会社等をいう」ことになっています。

上場後もゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式の50%以上の保有する日本郵政は、間違いなく、この2社の親会社ということです。

親子上場では常に親会社と子会社の少数株主との利益相反や、親会社から見た子会社少数株主への利益流出などが課題とされており、私も実務で過去に何社かその課題解決に携わってきました。

特に子会社の上場については、親会社に依存することなく、独立した事業運営が可能か否かが、審査上重要であり、ヒト、モノ、カネ、情報等すべてにおいて、一定の定量的な数字をクリアしなければならず、結構ハードルが高い項目もあります。

具体的には、親会社から出向していた主要部門長を転籍させたり、親子間で取引を行っていた場合、その商取引の価格含めた取引条件が第三者と取引を行う場合と、遜色のないものに条件変更したり、役員構成の過半数を親会社出身以外の人間にすることが必要になるということですね。

本件では上記の審査の観点から、ゆうちょ銀行とかんぽ生命が、日本郵政からどのくらい独立性を保っているかということになります。

特に、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、貯金や保険販売などの窓口業務を日本郵便に委託しており、日本郵便は2015年3月期にこの2社から9600億円の手数料収入を計上しています。

現状、この委託手数料の算出根拠が非開示になっているのですが、上場時の有価証券届出書には当然、「重要な契約」として、その算定根拠と金額の妥当性が記載されていなければなりません。

そして、個人的には、ゆうちょ銀行とかんぽ生命はその商品の販売チャネルを、ほぼ100%郵便局に依存し、販売チャネルの代替性がないことを勘案すると、この金融2社は、上場審査場、本当に独立した発行体として機能しているのか、甚だ疑問です。

そもそも親子上場は2007年10月に当時の各証券取引所共同声明としての「中核的な子会社の上場に関する証券取引所の考え方について」で、

「親会社グループのビジネスモデルにおいて、非常に重要な役割を果たしている子会社、親会社グループの収益、経営資源の概ね半分を超える子会社などのいわゆる中核的な子会社の上場については各企業グループ、子会社の事業の特性、事業規模、過去の業績の状況、将来の収益見通し等を総合的に勘案しながら、慎重に判断していくことといたします」

と発表されており、ゆうちょ銀はグループの連結純資産の約8割を占め、かんぽ生命を足すと9割を超えることを考えると、十分に中核的な子会社に当たると考えています。