韓国と北朝鮮は一体何がしたかったのか?〜一触即発の軍事的緊張からすぐに収束

朝鮮半島が緊張と緩和を繰り返す理由
宮本 悟

「落としどころ」を探っていた?

今回の軍事的緊張の原因である地雷爆発事件はどうして発生したのか。それを第三者が検討・調査する方法はない。南北高官会議の合意で北朝鮮側が遺憾の意を表したことで、韓国では北朝鮮側が地雷爆発事件に責任あることを認めて謝罪したという見方がある。

しかし、南北高官会議に出席した、朝鮮労働党統一戦線部長である金養建は、27日に北朝鮮の朝鮮中央テレビに出演して、地雷爆発事件を「原因不明の事件」としており、北朝鮮側が地雷を埋めたことを認めたわけではない。さらに言えば、20日に北朝鮮側から韓国側に砲弾が撃ち込まれたということも、北朝鮮は認めていない。

これは、北朝鮮側がわざわざ軍事的緊張を高めようとしていたわけではないことを意味する。もし、北朝鮮が軍事的緊張を高めたければ、「原因不明の事件」ではなく、露骨に北朝鮮側の仕業であることを明確にした方が効果は高いからだ。

では、韓国側がわざと南北朝鮮の軍事的な緊張を高めるために地雷爆発事件を北朝鮮の責任にしようとしたのであろうか。それも考えにくい。というのも、23日に韓国兵士が、韓国側が埋めた地雷を踏んで骨折したという事故が起こったが、韓国軍がそれを発表したのは26日である。23日は、南北高官会議が始まったばかりだったため、これ以上、緊張を高めないように発表を遅らせた可能性はある。

すなわち、韓国側もわざわざ軍事的な緊張を高めたくはないというのが本音で、韓国の国防部合同調査団もわざわざ南北朝鮮の軍事的な緊張を高めるために地雷爆発事件を北朝鮮の責任にしようとしたのではないと考えられる。

南北朝鮮が共に「軍事的緊張を高めたくはない」と考えたのであれば、南北高官会議で早期に合意に至った理由はおおよそ分かる。これ以上、軍事的緊張を高めたくないので、緊張緩和のためにとりあえず妥協したと考えられるであろう。

では、南北朝鮮が共に軍事的緊張を高めたくないのにもかかわらず、なぜ軍事的緊張が高まったのであろうか。これはゲーム理論の一つである「囚人のジレンマ」で説明できる。

「囚人のジレンマ」とは、お互いに相談できないように別室に入れられた2人の囚人が尋問された場合のジレンマであり、個人の利益の追求は、合理的な選択とは限らないことを示したゲームだ。

囚人には、一方が自白して、もう一方が黙秘した場合には、前者は釈放、後者は10年の懲役となり、2人とも黙秘した場合には懲役1年、2人とも自白した場合には懲役5年になるという条件をつける。2人が最大の利益を得るためにはお互いに相談して2人とも黙秘することだが、お互いに相談できないので、相手の裏切りを危惧して、結果的にどちらも自白するというジレンマである。

現在の南北朝鮮は政府間の協議方法がほとんどない。すなわち、お互いに相手にすぐに相談できない状態にある。南北朝鮮の場合には、一方が相手を批判し、一方が批判しない場合には、前者には国際社会が味方になり、後者は国際社会から見放される。

さらに、両者がお互いに批判しなければ、事件は曖昧にされて軍事的緊張は高まらないが、お互いに批判すれば軍事的緊張が高まることになる。両者にとって最大の利益は、お互いに協議して批判しないことであるが、協議できない場合には、相手の裏切りを危惧して、結果的にお互いに批判するというジレンマに陥っている。そのため、軍事的緊張が高まるのである。