渡辺 それからしばらくしてお亡くなりになったので、あれが最期のスーツだったのだと思います。そういう傑出した方々とおつき合いさせていただけるこの仕事は、きっと何歳になっても学ぶことの連続なのでしょう。だからこそ、歳を重ねるのが楽しみで仕方ありません。
日野 島地さんは「今が人生の真夏日だ!」といつもいっていますが、それと通じるものがありますね。
島地 経験すればするほど世界が広がり、楽しいことが増えていく。だから命の炎が燃え尽きる瞬間まで人生は真夏日なんだよ。60過ぎたら定年で、孫に会うのを楽しみにして余生を過ごすなんて男は、人生を味わい尽くしていないと思うね。
渡辺 壹番館のお客様にも高齢の方は大勢いらっしゃいますが、確かにみなさん、どんどん元気になられていく気がします。
島地 それでこそ男というものでしょう。成功者はやはり違いますね。いやいや、今日はおもしろい話をありがとうございました。最期は、ぼくか持ってきた葉巻で〆ることにしましょう。
〈了〉
著者: 開高健、島地勝彦
『蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』
(CCCメディアハウス、税込み2,160円)
1989年に刊行され、後に文庫化もされた「ジョーク対談集」の復刻版。序文をサントリークォータリー元編集長・谷浩志氏が執筆、連載当時の秘話を初めて明かす。