第10回ゲスト:渡辺新さん (後編)
「親子二代はもちろん、なかには三代にわたるお付き合いのお客さまもいらっしゃいます」

島地 勝彦 プロフィール

ビスポークテーラーは、顧客を知り尽くす「病院」のようなもの

日野 長くお付き合いされる方がいる一方で、新しいお客さんがいなければ商いは続けられませんが、新しいお客さんとの接点はどういった形が多いのでしょうか?

渡辺 いちばん多いのはご紹介ですね。

島地 父親がずっとつくっていて、息子がいい歳になったら「お前も行って来い」と。

渡辺 親子二代はもちろん、なかには三代のお付き合いというお客さまもいらっしゃいます。

島地 ビスポークテーラーは、お客さんのかなり深いところにまでふれるのでしょうから、ずっと築いてきた信頼に勝るものはありませんよね。

渡辺 仮縫いでご自宅にうかがう場合、クローゼットのなかはすべて把握しています。最近はウォークイン・クローゼットが多く、寝室まで入ることも珍しくありません。おっしゃるように、お客さまに信頼されていなければ出来ない仕事です。

島地 以前、父上にお話をうかがったとき、ビスポークテーラーを「病院」にたとえたいたことを思い出しました。年齢によって、また健康状態によって変化する体型に合わせて洋服を仕立てるのだから、型紙はカルテのようなもので、そこにはたくさんの個人情報が詰まっていると。

体の特徴も、たとえば右手と左手の長さが少し違うなど、人によってミリ単位の調整が必要な上に、仮縫いのときは文字通りパンツ一丁ですべてをさらけ出すわけですから、「病院」とは言い得て妙です。

渡辺 なるほど、自分の父ながらうまいことをいいますね。

日野 僕は注文服を仕立てたことがないのでわかりませんが、仮縫いは毎回ぐらいするんですか?

渡辺 人それぞれですね。細かい方は、納得するまで何回でも、たっぷり時間をかけます。