災害の記憶をいまに伝える日本全国「あぶない地名」

この漢字が入っていたら要注意!
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鳴滝」という地名について『地名用語語源辞典』(東京堂出版)では〈水音をたてる滝。水音の激しい急流〉と説明しており、水が激しく流れる土地を示している。

長崎大水害で甚大な被害を出した鳴滝だが、被災現場を訪れたところ、もはやその面影はなかった。新しく建てられたのであろう住宅を含めて、家々が密集している。

この鳴滝は昔、人々が頻発する水害を避けたため、それほど住宅はなかったそうだ。それが近年になって引っ越してくる人が急増し、今のような住宅地を形成しているという。その理由を、長崎市内の不動産業者はこう指摘する。

「少し前に、鳴滝を『高級住宅地』にする触れ込みがありました。それからですよ、どんどん家が増えていったのは」

たしかに町を散策してみると、シーボルト記念館の周辺は綺麗に整備されており、異国情緒すら感じられる。ほどよく自然もあって、閑静な山の手といった雰囲気だ。不動産業者は続ける。

「お店に来る年配のお客さんの中には『高級住宅地』という宣伝文句に惹き付けられて鳴滝に家を建てた方が大勢いらっしゃいますが、後から防災マップを見て、ビックリされますよ」

同じく九州は福岡県みやま市瀬高町東津留(ひがしつる)。19世紀から今に至るまで20回以上、町を流れる矢部川の氾濫に遭っている。'12年7月11日~14日にも、梅雨前線に伴う集中豪雨によって矢部川の堤防が決壊、濁流が東津留の家々を呑みこんだ。

この堤防が決壊した現場周辺には「津留」という地名がよく見られる。矢部川を挟んで東津留の反対にある柳川市大和町六合という地区は、かつて「西津留」と呼ばれていた。さらにその両地区を「津留橋」が結んでいる。

津留地区で一番の長寿である93歳の男性に話を聞くことができた。

「『津留』という地名はよう水害が起こる場所だと、わしらぐらいの者はみな知っとる。矢部川が鶴の首みたいに蛇行してるだろ。わしが小さい頃はそこからしょっちゅうキレよった(氾濫した)」

現地で矢部川を間近にすると、確かに鶴の首が曲線を描いているように、大きく蛇行している様がよく分かる。この「鶴」が「津留」となり、今に歴史を伝えているのだ。

大都市圏も油断はできない

一方で、災害が起こりやすい地名を見つける際、土地の今の様子だけを判断材料にしてはいけない。川や山に近い場所は当然、災害も発生しやすいが、大都市の中心部であっても油断はできない。大阪府大阪市鶴見区放出(はなてん)もそうした土地に当てはまる。

大阪市の東部に位置するこの放出は、マンションやスーパーマーケット、工場などが立ち並ぶ活気あふれる町だ。駅に降り立って辺りを見回しても、災害とはまったく無縁な風景が広がっていた。

しかしこの町を明治時代の古地図で見ると、様相は一変する。かつてこの地は田畑や池が非常に多い低湿地帯だったのだ。北には寝屋川、南には第二寝屋川、そして西には淀川と、3つの川に囲まれる形になっているこの放出。それゆえ川が氾濫すれば、水が一気に町に流れ込む可能性が高い。

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