天津大爆発 習近平政権が隠蔽する「5つの疑惑」
~実は犠牲者千人超、経済政策の失敗をうやむやに?

福島 香織

疑惑④事件と権力闘争の関連

習近平は、この事件を権力闘争に利用しようとしているのではないか、という疑いがある。

事故現場となった浜海新区開発は政治局常務委・張高麗が天津市党委書記時代に推進したプロジェクト。だが、2014年早々、この浜海新区がゴーストタウン化し、事実上頓挫していることが党内部で問題になっていた。

内部会議で、天津市は5兆元の債務不履行に陥り実質財政破綻しており、その責任が張高麗にあるのだと、副首相・汪洋から批判されたという話も漏れ伝わっている。張高麗は習政権の副首相で、経済政策の柱の一つである「北京・天津・河北省一体化政策(京津冀一体化)」の責任者だ。

実のところ習近平は、政敵である江沢民派(上海閥)に属し、石油閥でもある張高麗を信頼しておらず、天津の経済政策失敗のツケを払わせる心づもりだった、という見方もある。

2015年7月24日、河北省党委書記で周永康の元秘書・周本順が「重大な規律違反」で失脚したことで、京津冀一体化政策はますます停滞している。浜海新区開発の頓挫、京津冀一体化政策の遅延、そして今回の天津大爆発の政治責任の矛先を、上海閥で石油閥の張高麗に向けることで、天津の財政破綻問題を「爆発事件の影響」としてカモフラージュするのではないか。

疑惑⑤事故は自然発生的なものなのか

今回の爆発事件は偶発的なものではなく、誰かに仕組まれたのではないか、という疑いがある。爆発の最初の原因となった倉庫火災がどうして起きたのかは未だ不明である。一時期、車から発火した、というウラの取れない噂が広がった。そこでテロ説、あるいは習近平の政敵が、習近平政権をゆさぶるために仕掛けたという陰謀説まで流れている。

最大の疑惑は、数々の疑いが政権への不信感と批判に転じていくのを、習近平政権は報道統制と言論封鎖だけで防ぐことができるのだろうか、ということだ。報道の自由と言論の自由、そして法のもとの平等以外の方法で、人々の不安を解消し政権への信頼を取り戻すことは無理ではないか。

福島香織 ふくしま・かおり ジャーナリスト。大阪大学文学部を卒業後、産経新聞に入社。上海・復旦大学に語学留学し、01年に香港、02~08年に北京で産経新聞特派員として勤務。09年に産経新聞を退社後、ジャーナリストとして活動。中国政界・経済界の裏側を取材、分析している


 ★ 読みやすい会員専用のレイアウト
 ★ 会員だけが読める特別記事やコンテンツ
 ★ セミナーやイベントへのご招待・優待サービス
 ★ アーカイブ記事が読み放題
 ★ 印刷してじっくりよめる最適なレイアウト・・・などさまざまな会員特典あり

▼お申込みはこちら
 http://gendai.ismedia.jp/list/premium