心臓の拍動は「1日10万回」! なぜ休まず動き続けられるのか?

心臓は自分で自分を癒している!?
柿沼 由彦 プロフィール

マウスという動物は心筋梗塞に弱く、通常のマウスなら2週間後には半分以上が死亡してしまいます。ところがNNCCS機能強化マウスは、なんと9割以上が2週間後も生存していたのです。

心筋梗塞に罹っても9割以上が生き残ったNNCCS機能強化マウス

Q それはすごい!

柿沼 おそらくNNCCS機能を高めることは、心筋梗塞に代表される虚血性心疾患に対して、劇的な効果があるとわれわれは考えています。虚血性心疾患は日本人の死因ではがんに次ぐ多さですから、その意味するところは大きいと思います。

Q しかし、ヒトの場合は遺伝子を改変するわけにはいきません。NNCCS機能を高める方法がほかにあるのですか?

柿沼 マウス実験の結果では、NNCCSに人為的に介入して機能を高める有力な方法が2通り見つかっています。

ひとつは薬剤による方法で、もうひとつはもっと簡単な、ある物理的な処置による方法です。

薬剤を使わずにすめば、患者の身体にとっても、また経済的にも大きな負担軽減になりますので、現在はこの方法によってヒトにおいても同様の効果が得られるのかを、全力をあげて検討中です。特許のからみもありますのでまだ多くは申し上げられませんが、見通しは明るいと考えています。

*柿沼氏の新著『心臓の力』の前書きがこちらで読めます→

柿沼由彦(かきぬま・よしひこ) 
1962年東京生まれ。千葉大学医学部卒業。筑波大学大学院医学研究科修了。医師、医学博士。Vanderbilt University Medical Center Research Fellow(米国)、日本学術振興会特別研究員、理化学研究所脳科学総合研究センター研究員、高知大学医学部准教授を経て、現在、日本医科大学生体統御科学分野大学院教授。2009年、心筋細胞みずからがアセチルコリンを産生する非神経性心筋コリン作働系(NNCCS)を発見。2013年、NNCCS機 能亢進マウスによる心筋虚血耐性機構を動物モデルで報告し、現在このモデルを使って、心臓から脳にはたらきかける制御機構について研究を行っている。2010年、Ed Yellin Award受賞。