昭和が終わり、狂乱バブルはピークを迎えた……日本の分水嶺「1989年の呪い」を語ろう

田原総一朗×保阪正康×後藤正治
週刊現代 プロフィール

消費税導入と竹下退陣

田原 自分の恥を話すようだけれども、実は僕もこの経済はおかしいと考えて、「虚の繁栄」という題で論考を発表しようと思っていたんです。当時は「バブル」という言葉がまだなかったからね。ところが、銀行や証券会社や大蔵省の官僚のところに取材に行ったら、「そんなこと書いたら恥をかくよ。これは『実の繁栄』だ」と誰もが言うもんだから、自信がなくなって引っ込めてしまった(笑)。

後藤 その論文が出ていたら、「バブル」じゃなくて「虚の繁栄」と呼ばれていたかもしれない(笑)。

保阪 経済ではバブル崩壊が始まった'89年ですが、政治の世界でも自民党が弱体化して'55年体制の終焉が始まった。'88年にリクルート事件が起こり、'89年6月には竹下登内閣が総辞職。それに続く宇野宗佑内閣は69日間しかもたなかった。そして、海部俊樹内閣が誕生することになる。

田原 リクルート事件で自民党の有力者は軒並み引っかかってしまった。竹下登、宮沢喜一、安倍晋太郎、森喜朗……。

保阪 宇野は、まさか自分が総理になるとは思っていなかったから、女性問題もちゃんと処理できていなかった。それで、総理に就任した途端、相手に暴露されてしまったわけですから、気の毒な面もありますよ。

田原 神楽坂の芸者への手切れ金に、300万円くらい払わなきゃいけないところを、30万円しか出さなかった。遊び方を知らなかったんだな。

後藤 僕には「三本指の首相」という印象ばかりが残っています(笑)。

保阪 リクルート事件で金権政治だと叩かれ、宇野総理は女性問題で、テレビに映っただけで主婦たちに「気持ち悪い」と言われてしまった。そこで政治家が大きく変質したと思いますね。

つまり、かつては待ち合いで酒を飲んで、猥談をしながら政治について語り合っていた政治家たちが、ホテルの朝食会に集うようになった。それ以前の政治家に会うと、「政治家は、なんて猥談が好きなんだ」というくらい、卑猥な言葉で政治を語っていた。「あいつは田中に腰を振りやがってけしからん」とかね。

田原 '89年2月にはリクルートの江副浩正元会長が逮捕されているわけだけれども、僕ははっきり言って、リクルート事件は冤罪だと思っている。政財官の大物に、リクルートコスモスの未公開株を配った、けしからんというけれども、当時はそんなこと他の会社でもやっていたんです。それを検察もマスコミも、あとから、「違法だ」と言ったんだ。あれは急成長した新興勢力の江副氏に、旧勢力の財界人たちが嫉妬した結果ですよ。

保阪 自民への逆風となったのは、もう一つ、消費税導入ですね。'89年4月から消費税3%が導入された。宇野辞任の決定打になった7月の参院選大敗と社会党の躍進は、消費税反対という声によるものも大きかった。

後藤 欧州各国の消費税率はほとんど20%前後です。現行程度の社会保障を維持しようとすれば税率アップは避けられないのですが、3%の消費税さえ極めて抵抗感が強い。現在の財政論議につながる問題ですね。