【特別対談】内田樹×水野和夫 
資本主義の限界とニッポンの未来〜経済が縮み続ける時代をいかに生きるか

週刊現代 プロフィール

内田 それでも世界の国々が擦り寄るのは、「鉄火場」がそこにしかないからでしょう。

水野 要は、世界中どこを探しても成長市場などなくなってしまったということです。'90年代以降の世界経済は、「3年に1度バブルが起こり、それが崩壊する」ことを繰り返してなんとか維持しているだけ。中国の場合は、リーマン・ショック後の不況を4兆元(約80兆円)という大公共投資でなんとか救ったわけです。

内田 バブルの後始末をするには、次のバブルをしかけるしかない。

水野 ええ、しかも次のバブルは前回より大きくなければいけない。

内田 ほとんど「バブルの覚醒剤中毒」ですね。もちろん、その中国バブルが崩壊すれば、日本にとっても他人事ではない。

水野 中国人富裕層による日本国内での消費も、打撃が避けられない。中国人の購入で高値を維持してきたタワーマンション市場にもブレーキがかかります。投資ファンドの人たちのように、「下げ」でも儲けられればいいのでしょうが、それほどしたたかな日本人は少ないですからね。

株価が上がれば幸せか

内田 その投資ファンドの格好の餌食になっているのがアベノミクスなわけですが、正直言って、株価は上がっているものの、好況だという実感はありません。

水野 黒田東彦総裁の号令のもと、日銀がマネーの量を2倍に増やしたことで為替は円安になり、株価は2倍になりましたが、結局はそれだけ。景気はよくなっていません。

内田 不思議なのは、景気がいいという実感はないけれど、株価が上がっているからよしとしようというムードがあること。株価と生活はほとんど関係ないですよね。

水野 私はNHKのニュースで毎日、株価を伝えるようになったのがいけないと思うんですよ。

内田 昔は、プロレスの結果なんかを報道していたのに(笑)。

水野 株価の上がり下がりに必要以上に注目が集まり、株価が経済の状況を示していると錯覚してしまった。'87年のNTT上場が、国民が株に一気に興味を持ったきっかけだったように思えます。

内田 今年秋に予定されている「ゆうちょ銀行」の上場でも、同じことが起こるかもしれませんね。