「二度と戦争を起こさないぞ」って言うけど、いや、もう起きてるんじゃないの?

いとうせいこう×高橋源一郎 "あの日"の後に書くことについて 2
いとうせいこう, 高橋源一郎

責任を取らない国は、同じことを繰り返す

高橋:ご存じのように、この戦争は負けているんですが、負け方もひどい。もうひとつは、戦争の名に値しない、これもひどい。さらにひどいのは、責任を取った人間がいない。フィリピンで生き残った元兵士の書いたものを読んでいたら、「平時において、軍隊は国民を守る」。しかし「戦時になると軍隊は国民を守らない」と書いてありました。

戦闘が始まると軍隊は国民を守らないし、もっとひどくなると、軍隊は軍隊を守るための軍隊になる。もっとさらにひどくなると、軍隊は上官を守るための軍隊になる。なので、日本軍の戦闘の生き残りを見ると、帰ってきたのは上の人間ばっかり。下の位に行くほど死亡率が高いという逆ピラミッド構造なんです。

さっき言ったように、良い戦争と悪い戦争があるかどうかはわからない。僕はそういう意味では単純な反戦主義じゃないんですが、この国は戦争をやる資格はないと思います。なぜかというと、責任を取らないという体制は、実は戦後70年の間、全く変わっていないじゃないですか。今回のあの新国立競技場問題にしても。

いとう:みんなが悪いと言っているのに。

高橋:誰もやめない。公害問題もそうですよね。この国は、上の人間は絶対に責任を取らない。こういう国が戦争をやるとどうなるかというと、同じことを繰り返すと思います。日本という国は戦争禁止条例を作った方がいい。

いとうせいこうさん

いとう:というか憲法9条はそういうことだったんですよね。アメリカから見ても、これはもう近代戦不可能。だから9条がここにふさわしいという。確かに近代戦だったら、何十パーセントかが死んだらもう確実に終戦っていうのを、全然越えて死んじゃっても日本は終われない。終われないっていうことが問題なんですよね。終わることができない戦争は始めてはいけない。

高橋:そう。今回、伯父さんの慰霊に行って思ったんですが、これはひどい戦争だ。どの戦争もひどいという言い方は、逆にこの戦争を免罪してしまうと思う。この国の、この戦争はひどい。そしてこの国の人たち、特に上の人間たちのマインドが変わらない限り、僕は絶対同じことをすると思っています。