自然を統一して眺め、理解しようとする姿勢である。
凡人は夜空に浮かぶ月とリンゴの落下を、何の脈絡もない別々の現象だと思う。ところが、ニュートンにはこれが同じに見えたのである。
凡人は落下というと、地面へ向けての墜落、衝突をイメージするが、天才は違った。月が地球の周りを、惑星が太陽の周りを回るのも、永遠に落下を続けているからであったのである。そうでなければ、月も惑星も慣性の法則に従い、軌道の接線方向に沿って宇宙の彼方へと飛び去ってしまう。
月は地球の、惑星は太陽の重力に引かれ、それぞれの軌道につなぎとめられながら、永遠の落下という回転を繰り返しているのであり、それは地上における物体の落下と本質的に同じ現象であった。
有名なエピソードに伝えられる光景を目にしたとき、ニュートンの目には天体の運動もリンゴが落ちるのも同じに見えたのである。
では、アインシュタインの場合はどうかというと、どのような速度で運動する観測者にも光の速度は常に同じに見えたし、重力場に身を置いたときと加速度運動をする状況がまったく同じに見えたというのが相対性理論の根幹である。
ニュートンと同様、アインシュタインも独立と思われていた対象を統一して記述できるという信念を持ちつづけたのである。こうした指向性はいまもなお、物理学のガイドラインとして受け継がれている。
というわけで、二人の天才の共通点に光を当てながら、近代物理学の誕生、発展と、そこから脱皮して生まれた現代物理学の今日に至るまでの歩みを、光と重力をキーワードにしてたどってみたいと考えた次第である。
アインシュタインが一般相対性理論を発表してから、ちょうど100周年に当たる年に上梓される本書が、これからの物理学100年を展望する、ひとつのきっかけになれば幸いである。