米軍を唖然とさせた日本軍の人命軽視〜重傷病者には「自決」を要求

【特別公開】一ノ瀬俊也=著『日本軍と日本兵』3
一ノ瀬 俊也 プロフィール

小括

日本兵たちの生と死をめぐる心性を「天皇や大義のため死を誓っていた」などと容易かつ単純に理解することはできない。米軍の観察によれば中には親米の者、待遇に不満を抱え戦争に倦んでいる者もいたからである。

その多くは降伏を許されず最後まで戦ったが、捕虜となった者は米軍に「貸し借り」にこだわる心性を見抜かれて、あるいは自分がいかに役に立つかを示そうとして、己の知る軍事情報を洗いざらい喋ってしまった。

日本兵は病気になってもろくな待遇を受けられず、内心不満や病への不安を抱えていた。戦死した者のみを大切に扱うという日本軍の精神的風土が背景にあり、捕虜たちの証言はそれへの怨恨に満ちていた。これで戦に勝つのは難しいことだろう。

にもかかわらず兵士たちが宗教や麻薬(!)に救いを求めることはないか、あっても少なかった。それがなぜなのかは、今後の課題とせざるをえない。

一ノ瀬俊也(いちのせ・としや)
1971年福岡県生まれ。九州大学文学部史学科卒業、同大学大学院比較社会文化研究科博士課程中退。博士(比較社会文化)。現在、埼玉大学教養学部准教授。専攻は日本近現代史。