1945年と2015年が地続きだと実感できますか? 高校生らとつくる「デジタルアーカイブ」できっかけ提供

渡邉英徳さんインタビュー
佐藤 慶一 プロフィール

――デジタルアーカイブの永続性という意味では、メンテナンスはどれくらい手間がかかるのでしょうか?

渡邉:メンテナンス自体はふつうのWebコンテンツと同じくらいだと思っていただいてけっこうです。もちろん維持するだけなら大変ではないですが、新しい資料や動画などをアップデートする必要はあるため、こまめなメンテナンスが必要になります。アプリに関しては、ポリシーや仕様が急激に変わるのでいっそのことソースコードをGithubなどで公開して、世界中の人が自由にカスタマイズできるようにするという選択肢も考えています。

また、Google EarthのAPI提供が今年12月で終わってしまうので、今年中にオープンソースのデジタル地球儀に移植しないといけない状況です。拙著(データを紡いで社会につなぐ)でもGoogle Earthがいつまで使えるかわからない、と書きましたが、本が出て2年経たないうちにそのタイミングが来てしまい、ネットの移ろいやすさを再び感じています。

このような外部環境の変化もあり、今年か来年あたりがひとつの分岐点になるかもしれません。これまでは開発・運用を渡邉研究室で丸抱えしていたんですが、オープンソース化して、世界中のサーバーでヒロシマ・アーカイブのクローンが動いているような状態もありだと思います。もちろん、証言などの資料には著作権や肖像権がありますから、その点について配慮しなければいけませんが。

多くの人が無言になった沖縄戦デジタルアーカイブ

――今年の話で言えば、沖縄タイムス社とGIS沖縄研究室と共同で「沖縄戦デジタルアーカイブ」を立ち上げました。ヒロシマやナガサキと違い、時間軸が導入されています。

渡邉:これまで制作してきたものと違うのは、沖縄タイムスさんとのコラボというところです。沖縄県では地元紙が強いメッセージをもっています。ヒロシマ・アーカイブとナガサキ・アーカイブはぼくらで全体のメッセージをつくっていたのでフラットなプラットフォームでしたが、今回は特に特集サイトにおいて、沖縄タイムスさんのメッセージが色濃く出ていると思います。

デジタルアーカイブ本体においては、沖縄の人たちが1945年~2015年までの70年間、どのように移動していったのか、また地理の変化も知ることができます。たとえば、1945年にあった嘉手納基地の滑走路の一部がいまにも残っています。そういうことを知ると、沖縄戦が現在と地続きだという実感が生まれます。

――過去の一瞬だと思っていたことが、現在と接続しているという実感が湧くことで、戦争や災害なども他人事だと思えなくなる気がします。

渡邉:そのことが、沖縄戦デジタルアーカイブをつくったことのひとつの収穫です。この時間軸機能は、ほかのデジタルアーカイブにも展開できたらと考えています。先日、広島と長崎でおこなったワークショップでは被爆者の方の移動の証言を聞き、歩いた軌跡に沿って線を引き、可視化する試みを行ないました。

これまでのヒロシマ・ナガサキの両アーカイブは、原爆投下という一瞬を切り取った、言わば「凍らせたアーカイブ」でした。さらに、被爆者の方が前日どこにいたのか、これまでの70年間でどれだけ移動したのか、そういったことを可視化できれば、その軌跡が現代を生きる私たちにつながり、より身近になるのではないでしょうか。

ちなみに今回の沖縄戦デジタルアーカイブでは死者のデータを載せています。これまで、ヒロシマ・アーカイブをはじめてお見せすると「ほう」といった声を上げる方が多かったんですが、沖縄戦デジタルアーカイブでは多くの方が無言になります。生々しいリアルなデータや動きが、強く迫って来るものになったからかな、と思います。

――最後に、今後デジタルアーカイブでやりたいことを教えてください。

渡邉:今後やりたいことは大きく2つあります。これまで制作したデジタルアーカイブでは、被爆者や戦争体験者の方々の証言データを閲覧することができました。ただ、その背景では無数の方々が亡くなっています。だからこそ、沖縄戦デジタルアーカイブでは、戦没者の方々のデータを載せています。これはぼく自身、見逃していたことです。

たとえば、沖縄に行ってスマホをかざすと、自分がいる近くの戦没者のデータがAR(拡張現実)で浮かんで見えるようなアプリを制作してみたいです。楽園のような現在の沖縄の風景の裏には、たくさんの死者の魂(マブイ)が遍在している――刺激が強いかもしれませんが――そういうことを淡々と示すことで、より迫って来るものがあるのかなと思います。

もうひとつは、多元的なデジタルアーカイブをひとつにまとめることができないかということです。ヒロシマ、ナガサキ、東日本大震災、沖縄・・・これらをすべてまとめることで、例えば二重被爆者のような「ふたつの戦災」のつながり、そして、さまざまな戦災・災害の歴史の潮流や、その根底に流れているものが表現できそうです。

さらに各国の戦災・災害についてのデジタルアーカイブを包含することができれば、真に「多元的」なデジタルアーカイブを構築できます。また、昨年リリースした台風リアルタイム・ウォッチャーのような、速報的であり、かつアーカイブ機能も持つシステムを組み合わせることで、過去と現在の災いをつなぎ、人々に伝えられると考えています。

【了】