丸太材が搬入されてきた。
太さ30cm程、長さ6mの原木杉が目前に60本、ズンと積み上がった迫力に気圧されている私。ビビリと期待感が交錯し、気持ちの片隅に闘志のようなものが、ちろちろと小さく燃え立つのを感じている。いよいよ始まるぞ。
丸太小屋は原木の素材をそのまま用いた野趣に富む力強い家屋だが、さすがに皮は剥く。先般、基礎材で使用した栗の木の皮剥きを少し紹介したが、今一度この難儀につきあっていただきたい。今般の作業こそ皮剥き本番じゃ。
実は、剥きやすい時期もある。冬期休眠していた木々は、弥生3月、暖かくなると新たな成長に向けてグングンと水を吸い上げる。そうすると材部と皮の間も水で潤い、杉材の皮などはペロペローと潔すぎるほどにわけなく剥がれ、ツルツルの木肌を露出させる。
ところが、水が上がった材は建材としてはあまりよろしくない。よく乾燥させないと腐りやすいうえに狂いやすい。虫も入っている。丸太小屋は基本的に生木をそのまま用いるので、含水率の多い材は完成後の収縮もはなはだしく、カビの原因にもなって厄介なことになる。できれば冬伐りの材を用いたい。
冬伐りの原木は、材と皮がみっちりと張り付いている。ヤニも頑なに固まり、まさに膠着。樹木の皮は、表面の荒皮と下層の渋皮の二層になって材部を覆っている。作業台に載せた原木に取り付き、まずは荒皮を剥きにかかる。
私はこの作業に「銑」という把手が刃の両端についた古道具を駆使する。やはり古道具の「手斧」を使う人もいる。車の板バネを加工し、専用の道具を自作する猛者もいると聞く。皆、工夫してこの難儀に挑んでいる。
作業にコツなどない。ガリガリとひたすら削る力技。一本剥がすのに2時間、フシが多いと半日もかかったりして。はあーっ、なんとか荒皮剥きました。さらに、電動工具の曲面カンナを用い、渋皮をていねいに剥がすこと2時間。都合、4時間程奮闘すると、白木の神々しい丸太材が一本仕上がる。これを60本。
皮剥きで体重が10kg以上減ったことを申し述べて、この難儀をご察しいただくことにする。
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