里山の雑木林は由緒正しい人工林だ。成り立ちは太古縄文に由来する。その林域に住まう人間が利用価値のある樹種を択伐し、管理・維持。燃料はもとより、肥料として活用できる落ち葉、堅果類や山菜、キノコなど、多くの副産物の恩恵にあずかりながら数千年にわたり共生してきた。
私はそんなお山に入植した。化石燃料の普及により見放されて荒れた里山の雑木林を再生し、その恩恵にあずかって暮らそうと小賢しく考えている、住民であり管理人だ。
緒戦は管理の基本“下刈り”。繁茂するツルや下草を刈り払って整理する作業。この先に待つ居住地確保のための伐採・整地の前段階作業でもある。
作業開始。エンジン刈り払い機を兵士の銃器のように構え、鼻息も荒く林内突入。行動原理を机上の理想・空想に拠っている私は、たちまち現実の高い壁にブチ当たる。30年は放置されたと思われる林内に、自在に繁茂した篠竹・ツル・灌木・下草は、強靭な抵抗となり立ちはだかってくる。ウジャウジャと密生し、縦横無尽に展開していて私の前進を阻む。
1時間、2時間・・・3日、4日、刈り払い機を振り回して奮闘すれど作業ははかばかしい進捗を見ない。切り屑が顔面に弾け飛んできて痛い。小枝がムチのように頬を打ちミミズ腫れになる。ツル草に足を取られてコケた。ひ弱な漫画屋はジワジワと挫けてきて、私は一体何をやっているのだと呪いはじめている。
ええい! と気合いを注入したところにバチンと大物の攻撃がきた。あまりの痛みで涙が滲む。キレかかるが怒りの相手は立ち木だし、木に向かって怒ったらアホ丸出し。いたしかたなく、「ひでばでぶー!」とか大声で意味不明の奇声を発して怒りを発散させたりしている。
十分にヘコみ、起点に帰ろうとしたら現在地不明。ぐるりと同じ景色で方向喪失。脱出を図り1時間以上林内徘徊。パニック! こうなると遭難だ。自分ちで。
守村大・著
『新白河原人 遊んで暮らす究極DIY生活』
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